『剣遊記超現代編T』 第四章 美女(?)漫画家のいちばん長い日。 (7) 「やあ、初めての撮影はどうですか☺?」
今回の企画の張本人――荒生田も現場に足を伸ばして来た。このサングラスのうしろには、心配顔をしている友美もいた。
「何事も初めての体験だから、緊張するのは無理もないよ☕ とにかくこれをチャンスに、世の中に大きく羽ばたくこともあるからなぁ☆★」
「はあ……♋」
おれはどちらかと言えば、漫画の腕で羽ばたきたいとですけど――治代は頭の中で、ため息混じりにつぶやいた。この一方で友美は、隣りにいる孝乃に声をかけていた。
「どう? きつかったらわたしから、きょうの撮影をここまでにするよう頼んでみるんだけど?」
友美の目線の先はこのとき、なにやら中原にも話しかけている荒生田の背中に向いていた。これに孝乃は、軽い気持ちで頭を横に振り、それから小さな笑みを返してやった。
「いや……よかですよ⛑ まだまだ撮影は始まったばっかりやし、これで話題になって、あたしたちの漫画がもっとヒットばしたら、これはこれで大いに有り難いことですから……☻♋」
「お姉ちゃんたちって昔っから、けっこうやせ我慢ばするほうやったけねぇ✍」
近所の商店に買い物に出て、しばらく現場から離れていた涼子も、ここで話に加わった。彼女もアシスタントたちと同様に、スタッフのいろいろな仕事を手伝っていた。
「まあ、お姉ちゃんたち、やせ我慢だけやのうて昔っから、けっこうスポーツなんかも頑張ってきたから、体力はまだ充分にあるっち思うっちゃね✌ なんちゅうたかて、スポーツに励んどったおかげかもしれんちゃけど、とにかくおかげで抜群のプロポーションば持っとんやけねぇ♐ 妹のあたしが見たかて、すっごいうらやましいくらいにやね♡♥」
「ははは……☁」
妹に応える孝乃の笑みは、誰が見ても元気不足気味となっていた。
「ゴクリ……♋」
その疲れて砂浜に腰を下ろす水着姿に、ある種の興奮を感じたらしい。和布刈が人知れず、静かにツバを飲んでいた。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |