『剣遊記超現代編T』 第四章 美女(?)漫画家のいちばん長い日。 (5) 「やっぱりオレの目に狂いはなかったみたいだな✌ 美人四つ子姉妹で人気漫画家初のアイドル的写真集、大ヒットは約束されたようなもんだぜ✊」
砂浜での撮影風景を少し離れた内陸の丘の上から眺め、荒生田がまさにおのれの大手柄のごとく吹聴していた。その自慢話と自己満足を耳に入れている者は、同僚記者の友美だけだった。
「……でも、ほんとにこれで良かったのかしら? 先生たちに漫画以外の仕事が増えて、本業の邪魔にならなかったらいいんだけど☢☁」
やや不安げな友美だが、荒生田は鼻で笑っていた。
「漫画が描けなくなっても問題ないよ☀ 鞘ヶ谷先生たちは見てのとおりの美人四つ子姉妹なんだから、他に競合するようなライバルタレントもいないことだし、この人気は漫画に関係なく、長く持続するのは間違いないから☻」
「それって……先生……たちが望むようなことでしょうか?」
友美の不安の種は尽きなかった。確かに荒生田の言うとおり、話題性充分な写真集は、大ヒット間違いなしだろう。しかし鞘ヶ谷孝治が根っからの漫画人間である本質を、他の誰よりも知る友美である。これで人生のレールがおかしくなる前触れにならなければ良いのだけれど――と言ったところか。
なによりもあの四人が実は♂だと言う、誰にも絶対に明かせない大秘密もあることだし。
わたしの心配が本当に杞憂だったら良いのになぁ――と友美が頭の中だけで付け加えたところで、荒生田がとても気になる発言をしてくれた。
「しかし、このまま水着撮影だけで終わるんだったら……もったいない話だよなぁ☻☻☻」
友美は思った。
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