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『剣遊記超現代編T』

第四章 美女(?)漫画家のいちばん長い日。

     (3)

 日付はとんとん拍子で経過をして、これまた早や一週間。ここは神奈川県湘南海岸のリゾート地。元孝治たち四人――孝江、孝乃、治花、治代は都心を離れ、なんとはるばる海水浴場にまで足を伸ばしていた。

 

 しかも経費はすべて、未来出版持ち。目的は今さら言うまでもなく、四人の水着撮影である。

 

 表向きは。

 

 なお、撮影場所に湘南海岸が選ばれた理由であるが、ここには未来出版の社員研修寮があって、しかもそこには宿泊施設なども充実しているので旅費が安上がりで済むという、実に安易な方策で決められていた。

 

「ああ……ついにここまで来てしまったっちゃねぇ♋」

 

 治花が感慨半分憂鬱半分の気持ちでささやいた。あとの三人も同感。ここで状況の急展開を説明すれば、元孝治たち四人はけっきょく、荒生田の説得に同意をしちゃったわけ。

 

 あの日の出来事――四人の代理役である友美と荒生田の話し合いが、一応水着撮影のみであるという、言わば妥協の形式で合意され、元孝治たち四人も、それを承諾した。さらにこのあと、未来出版本社内にて行なわれた、本当に水着撮影がイエスかノーなのかの再確認も、今度は本人たちも交えて話し合わされた。そのときの模様を思い出し、孝乃がつぶやいた。

 

「あのサングラス(荒生田)から君たちは社の宝だとかなんとか言われて、ほとんど暗示にかけられたもんやったけねぇ♠ おれたちってつまり、強引な勧誘とか説教には、昔っから弱かったっちゃねぇ♣♢」

 

「まっ、その尻拭いはいっつも、あたしの役目なんやけどね☹☻」

 

 無論ちゃっかりと、涼子も撮影に同行していた。実際、涼子が行きたいとわがままを言い始めたら、兄である(今は姉)孝治はまさに、その言いなりとなっていた。

 

 これも昔っから、早い話が、一種のシスコンであろうか。

 

 さらに言えば、和布刈たちアシスタントの面々も、しっかりと湘南まで付き合ってくれていた。これも表向きは先生の補佐らしいのだが、彼らの(ニコニコ顔な)表情が、その本音をモロに現わしてもいた。

 

「しかし夢みたいだよなぁ……おれたちの鞘ヶ谷先生たちが、こうして水着姿まで見せてくれるんだから、まさにアシスタントの冥利、ここに有りってもんだよ

 

 言っている内容は意味不明ながら、事実、和布刈がほざくとおりであろう。


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