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『剣遊記超現代編T』

第四章 美女(?)漫画家のいちばん長い日。

     (17)

「よしっ! まずは孝江ちゃんから、そこの壁に背中を付けて、もたれかかってもらおうか☞」

 

 ヌード撮影が本決まりとなったとたん、中原は水を得た魚のように、思いっきりに生き生きとしていた。

 

 とは言え、無許可での野外いきなりヌード撮影は、ご法度中のご法度。もしも撮影を強行した場合、たちまちパトカーが何台も駆けつけてくる事態にもなりかねない。だけど撮影場所に使用しているこの現場は、前から何回も紹介しているとおり、会社の寮。未来出版所有の研修施設なのだ。従っていわゆる私有地であり、しかもけっこう高い塀があって外からは内部が一切見えないので、中でヌードになろうが逆立ちをしようが、まったくの自由空間(?)と言えるわけ(強引な解釈)。

 

「こうですかぁ……☁」

 

 覚悟を決め、おまけに室内撮影に変更したとはいえ、一糸もまとわぬ姿でいる孝江は、もう顔面全体から炎が噴き出すような思いでいた。

 

 今は孝江の撮影だが、やがて自分たちにも順番が回ってくるだろうと、孝乃、治花、治代の三人も、おのおの戦々恐々の気分で身構えていた。

 

「あれってほんなこつ、前貼りもなんも無しの状態やねぇ……☠」

 

 治花がゴクリとツバを飲んだ。現在季節は夏(設定)。おまけに三人とも、カメラの前に立たない間は、バスタオルを厳重に体に巻いていた。しかし当然ながら、その下は孝江と同様。一糸もまとっていない状態なのだ。中原カメラマンがいったいどのような構想を抱いているのかはわからないが、いずれは自分たちにも、ヌードの順番が巡ってくる。これは間違いなし。

 

「あたしたち……この際またおれたちって言わせてもらうっちゃけど、おれたちこげなことするために、謎の性転換ばしたとやろっかねぇ? しかも謎の四分割までして☢☠」

 

 ブツブツと治代はつぶやきながら、室内を見回した。ここは研修寮の講堂なので、内部はけっこう広い面積の空間となっていた。今はこの広い講堂内で、多くのカメラスタッフたちが、真面目な顔をして撮影仕事に精を出している。ただしプロのスタッフではない荒生田と牧山、それに和布刈などのアシスタント一同のみは、わかり過ぎるほどにニタニタ顔をして、スタッフの仕事を手伝っているけど。

 

「あいつら……この仕事が終わったら、毎日締め切り地獄の修羅場にしてやるばいね☠♨」

 

 半分冗談、半分本気の気持ちで、治代が苦々しくつぶやいた。そこへまたまたかかってくる、中原の気合いの入った大声。

 

「よしっ! 次は四人全員で、窓から外の景色を見てもらおうか! 君たちの綺麗な背中とお尻を撮ってみたいのでね♡」


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