『剣遊記超現代編T』 第四章 美女(?)漫画家のいちばん長い日。 (16) 「けっきょくここでも、外堀と内堀ば埋められた、っちゅうことやね☂☃」
孝江は自嘲気味でになってさやいた。
それから六人(元孝治たち四人、涼子、友美)で、こっそり話し合ったあとだった。事実上観念した元孝治たち四人は中原にヌード承諾の返事をしてみたのだが、熱血カメラマンはもう、それこそ狂喜乱舞の有様となった。
「ようやくわかってくれたのかね、君たちぃ! そうなんだよ! これこそ芸術! おれの究極の美を求める決意とド根性が、やっと君たちに通じたというわけなんだよなぁ!」
「言ってることがいっちょもわからんちゃね☠」
治花は早くも後悔の気持ちになっていた。
「ゆおーーっし! では撮影再開と行こっかねぇ✌✌」
「うわっち! 荒生田さん! 今までどこおったと!?」
突然な荒生田の再登場。元孝治たち四人と友美と涼子の話し合い中は、あれでも一応気を遣って、身を引いていてくれたものと思っていた。
それがいきなりのテンションの高さでの再出現である。治代は冗談抜きで、砂浜にて二メートル飛び上がった。これに荒生田は、ぬけぬけとほざいてくれたものだった。
「いやあ、君たちが本当にプロの意識に目覚めてくれて、雑誌編集者としてまさに生きた甲斐があったと言うもんだよ✊ お兄さんはとてもうれしいっ!♡」
「あたしたち……漫画のプロであって、モデルのプロやなかっちゃけどねぇ☠」
などと孝乃はつぶやいたのだが、もはやサングラス男の耳には入っていない模様。そこへまた、今まで中原カメラマンのスタッフを手伝っていた和布刈たちまでが、恐る恐るの感じで話に入ってきた。
「あのぉ〜〜☀」
「なに?」
先頭にいる和布刈に、治花が顔を向けた。すると和布刈は、慎重そうな口振りになって、元孝治たち四人に尋ねてきた。
「おれたちもそのぉ……撮影に協力しないといけませんかねぇ? なんかこれ以上は、おれたち素人が立ち入れる世界じゃないような気がしたもんで☻」
「きのうの夜んこつ、なんか罪悪感でもあるっちゅうと? ならそげん気にせんでもよかやけね☺」
治花は軽く応えてやったが、和布刈は慌てて頭を左右にプルプルと振るばかり。
「い、いや! きのうあの場にいたことは、ちょっとは悪いとは思ってますけどねぇ☻」
和布刈は一応反省しているような口振りであるが、その割には鼻の下が、多少伸びているように見えたりもして。
「まあ、それはもういいけ、それよりも協力ねぇ……?」
治花はさすがにこれをひとりで決めるのは悪いと思い、孝江、孝乃、治代にも訊いてみた。
「あげなこつ言いようっちゃけど、どげんする?」
「「「う〜ん、そうっちゃねぇ……?」」」
四人はそろって腕を組んで考えたあげく、なんとなく期待の目で見ているようなアシスタントの面々(和布刈、砂津、枝光、井堀)に答えてやった。
なんとなく代表で、孝江の口から。
「まあ、ええっちゃよ☹ どうせ写真集が出たら、あたしたちのヌードば全国の読者に見られるんやけ、ここで先に見せるのもあとで見せるのも、全然おんなじなんやけね☕♨」
アシスタント一同、飛び上がらんばかりに喜んだ話の展開は、今さら記すまでもないだろう。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |