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『剣遊記超現代編T』

第四章 美女(?)漫画家のいちばん長い日。

     (15)

 けっきょく一枚も撮らずして、とりあえずの休憩となった。

 

 元孝治たち四人は友美と涼子も交えて、スタッフ一同から少し離れた砂浜に腰を下ろした。荒生田と牧山はもちろんのこと、和布刈と井堀たちアシスタントの面々にも、席を外すように頼んでおいて。

 

 ちなみに荒生田は昨夜の出来事について、なぜかひと言も触れようとはしなかった。

 

「もしかして……頭の打ちどころが悪かったんかも?」

 

 治代が本気で心配するほどに。それはそうとして、今の問題は中原である。まるで、きのうの上機嫌はなんやったんやろっか? ――と言いたくなるような豹変ぶり。しかもその原因が、自分たちがヌードにならないことにあるという、なんだか言いがかりのような責任転嫁ぶりなのだ。

 

「ほんなこつ、どげんする?」

 

 孝乃がこの場のメンバーだけに聞こえる声で、そっと小さくささやいた。

 

「あのカメラマンの先生、あたしたちがほんとにヌードになるまで、ダラダラと撮影延期するかもしれんばい☠ もしそげなことになったら、いつまで経っても帰れんことになるかも……♋」

 

「そりゃ嫌ばいねぇ〜〜☁」

 

 治花もうんざり気分でつぶやいた。実際にもしもそのような事態に発展したら、それこそ何日でも何週間でも、この湘南の地で釘付けにされるかもしれない。そうなったら今後の週刊連載に、いったいどのような影響が及ぼされることになるのだろうか。被害は計り知れない結果となる。

 

「考えられる中で、今がいっちゃん最悪の状態っちゃねぇ

 

 治代が深いため息を吐いた。ここで孝江が、涼子と友美に顔を向けた。

 

「どげん思う? あたしたちこげな撮影ばさっさと終わらせて、早く帰って漫画ば描きたいっち思いよったんやけど、こんまんまじゃ簡単に収まらんごつなってしもうたっちゃね

 

 これにまずは、妹の涼子が答えた。

 

「あたしとしては、別にヌードになってもよかやない? ってとこなんやけどね☻ だいいち今のお姉ちゃんたち、服着とうのが完全にもったいないようなダイナマイトボディしとんやけねぇ♪♫♬」

 

「うわっち! 訊いたおれ……やないあたしが間違っとったばい☠☢」

 

 孝江は瞳が丸くなる思いとなった。

 

「わたしはぁ……☁」

 

 続いて友美が答えてくれた。

 

「あくまでも出版社の編集者の立場で言えば、もし鞘ヶ谷先生たちが脱いだら……この写真集、何度も言うけど絶対にベストセラーになること間違いなしと思うのよねぇ☹ でも、それで先生たちは良いと思うのかどうか……☁」

 

「とどのつまり、決めるのはおれたち……あたしたちの意思ひとつなんやけど、自分で決めなきゃいけん、っちことっちゃね☹☹☹」

 

「「「うんうん」」」

 

 治代がつぶやき返し、それに孝江、孝乃、治花が同意のうなずきを入れた。


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