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『剣遊記超現代編T』

第四章 美女(?)漫画家のいちばん長い日。

     (1)

 連載作品のネーム打ち合わせはいつものとおり、スタジオ兼自宅である、マンション十階。仕事場の窓際にあるソファーに腰掛け、テーブルを囲むかたちで行なわれた。

 

「そうねぇ〜〜、ここでヒロインが主人公に、もっと元気を付けるみたいに発破をかけるセリフなんかどうかしら?」

 

 担当記者の友美がストーリーへの意見を述べ、それを元孝治たち四人がふむふむとうなずいて、さらに物語をふくらませる格好。これがふだんの打ち合わせスタイルとなっていた。

 

 ただし最近になって、孝江も孝乃も治花も治代も、どこか上の空の感じ。友美の進言を、なんだか他人事のように聞き流しているだけのようでいた。

 

 だけど友美には、その原因がわかっていた。

 

「……先生たち、まだヌードをやるかどうかで頭がいっぱいなんですね☠」

 

「「「「うわっち!」」」」

 

 図星を指摘され、四人がそろって、瞳を真ん丸にした。それから孝江が苦笑気分になって、友美に応えた。

 

「……実はそうなんですよねぇ☢☻ おととい荒生田さんや中原カメラマンさんに言われたこと、あれからずっと頭にこびり付いて、こげなこと言うたらいけんっち思うっちゃけど、なんか漫画ば描くのに浮き足立っちゃって……♋」

 

「「「そうそう」」」

 

 残りの三人も、ここでまたうなずいた。

 

 元孝治たち四人と友美の背後では、砂津や和布刈たちアシスタントの面々が、来週号の原稿に、最後のペン入れを行なっていた。その彼らも元孝治たち四人と同様、心なしか執筆がにぶっているように、友美には感じられていた。

 

「このままじゃ良くないわねぇ……☁」

 

 事情がわかるだけに、友美自身も悩みは深刻といえた。

 

「とにかく先生たちを始め、みんながこんな調子だったら、連載に穴が開くことにもなりかねないわ⛔⛑ 今度わたしから、荒生田さんたちに話を聞いてみるから

 

「そうしてくれます?」

 

 孝乃もここぞとばかり、友美を頼り切る気持ちになっていた。もちろん残りの三人(孝江、治花、治代)も、まったく同じ気持ち。


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