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『剣遊記11』

第一章  嵐を呼ぶひと目惚れ。

     (11)

「こりゃまた、妙な話の展開になったもんばいねぇ〜〜☀ でも、ちょっとおもしろうもなりようっちゃね♡」

 

 孝治のつぶやいたひと言に、早速涼子が突っ込んでくれた。

 

『あらぁ? さっき孝治が言いよったことと、全然違うやない♐ さっきはあげん先の展開ば心配しよったとに♠♣』

 

「さっきんことけ?」

 

 孝治は鼻で笑って応酬してやった。

 

「まあ、確かにさっきと違うこと、おれ言いようっちゃねぇ★ でも、あの沙織さんの態度ば見て、友美と涼子はわからんね?」

 

『沙織さんの態度け?』

 

 孝治から言われたとおり、涼子が瞳を細め、帆柱に抱きついている沙織の姿を見つめ直した。

 

『あれがどげんかしたと?』

 

 それでもなお疑問顔である涼子に向け、孝治は改めて言ってやった。

 

「わからんかねぇ☁ 沙織さんは初めに言うた『波乱の幕開け』どおり、帆柱先輩のことば、ほんなこつ好きになっちゃったとよ♥ やけん、ありゃどげん風に見たかて、完ぺきなひと目惚れっちゅうやつっちゃね♥」

 

『あっ、そうけぇ〜〜☆』

 

 孝治にそこまで説明をされて、涼子もようやく納得の顔となった。ところがこれで済まさないところも、涼子らしい一面であった。

 

『でもなして、あたしんよか孝治んほうが、女の子の気持ちに敏感なんね? あたしんほうが正真正銘の女ん子で、孝治は仮の女ん子やのにねぇ☠』

 

「うわっち!」

 

「ぷっ♡」

 

 孝治は痛い所を突かれた気持ちとなり、友美は横で、くすっと微笑んでいた。

 

「そ、それはやねぇ……☢」

 

 あまり真剣に言い訳しようとも思わないのだが、孝治は涼子に弁解――というような感じで言ってやった。

 

「おれかてぇ……女の子歴が長ごうなったら、乙女心もなんとなくわかるっちゃよ☁ これがええことかどうか、自分でもようわからんとやけどぉ……☂」

 

「まっ、それはもう置いてやね✌」

 

 孝治の心情を察知してくれてか。友美がここで、話の方向を変えてくれた。

 

「でもけっきょく、店長ったらわたしたちんほうには、いっちょも意見ば訊かんかったっちゃねぇ✄」

 

 友美としては沙織のひと目惚れよりも、黒崎が自分たちのほうにはなにも言わなかったやり方が、かなり不満のようでいた。同じキャラバン隊護衛の一員であるのに、この件に関しては、なんだか蚊帳の外にされているような感じがすると――あとで孝治に言っていた。

 

「まっ、それも仕方なかっちゃね✐♠」

 

 そんな友美の腹立ちに、孝治は今度は、面白半分の気持ちになって応じてやった。

 

「護衛の隊長は先輩なんやけねぇ✈ やきー先輩が『OK』っち言うたら、おれたちはそんとおりにするだけっちゃ★」

 

『そうっちゃけど、もうひとつ理由がありそうばい☞』

 

「もうひとつ?」

 

 ここで涼子が漏らした意味ありげなひと言に、孝治と友美は思わずの感じで耳を傾けた。

 

「なんがあるっちゅうと? 涼子……☁」

 

 友美の問いに涼子はベンチに座ったまま、胸を反らしながらで答えてくれた。もはや言うまでもないが、完全に一般公開状態である胸を――であった。

 

『それはぁ……あたしが思うに、店長は沙織さんが帆柱先輩んこつ好きになったこと、孝治以上にとっくに気づいてんやなかってことっちゃよ✌ やけん大人同士、すぐに先輩に訊いたんだと思うっちゃ♡ キャラバン隊同行のことをやね☞ やけんもしかして早くも、ふたりん仲ば認めとうとちゃうやろっか? なんちゅうたかて年の巧やし、その点孝治はまだ子供やきー、そげな心配する必要っちゃ、いっちょもなかけんね♡』

 

「うわっち! 涼子ぉーーっ! そりゃどげな意味ねぇ♨」

 

 これにてカチンときた孝治。即座にベンチから立ち上がった。

 

『きゃはっ♡ 気に障っちゃったねぇ♡』

 

 当然涼子も、浮遊して逃走。先ほどのくやしい気持ちが、これで少しは緩和された模様。またこの光景は、涼子が孝治と友美にしか見えない状態である。だから傍目には、女戦士がひとりで勝手に、庭を走り回っているようにしか見えないだろう。

 

 この騒ぎはもうほったらかしにしておいて、友美はすでに、別の心配ごとにも考えが及んでいた。

 

「そげん言うたら、今んなって思い出したっちゃけどぉ……今度の旅って、あの三人も同行することになっとうっちゃねぇ☁ 今回も無事に終われるとええんやけどねぇ☃」


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