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『剣遊記[』

第三章 三枝子とひなワシ。

     (12)

「それはそうとやねぇ……✍」

 

 ここでいったん、話を切り替え。孝治は密猟者退治の功労者である三枝子に、顔を向けようとした。

 

「うわっち? あれぇ……♋」

 

 ところがなぜか、三枝子の姿が見当たらなかった。

 

「三枝子さん……どこば行ったと?」

 

 孝治だけではなかった。この場にいる全員が、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔になり、周辺をキョロキョロと見回した。すると友美が、突然崖の上を右手で指差した。

 

「あっ! あそこっちゃよ!」

 

「うわっち!」

 

 見れば三枝子が、垂直でけわしい崖をなんの命綱もなしによじ登っているところだった。

 

 そんな彼女のほんの少し上にある木の枝には、今もイヌワシの死骸がぶら下がっていた。


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