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『剣遊記 番外編X』

第五章 戦い終わって日が暮れて。

     (4)

「ここてワタシ、ひとつ提案あるのこと☜☻」

 

 先行き不安のため息しか出ない魔術師と戦士のふたり組に、このとき到津が、なにやら話しかけてきた。これに静香と裕志が、顔をそろえて注目した。

 

「提案なん?」

 

「なんですっちゃろ、それって……?」

 

 すると銀の翼を広げたドラゴン――到津が、鋭い爪が伸びている右手で自分のワニのような鼻先を、ポリポリとかきながらで答えてくれた。それも遥か西の方向に顔を向け、なんだか故郷をなつかしむような口調になって。

 

「ここニポンでは無理わやたけと、大陸の奥にワタシたちトラコンの一族、平和に暮らしてる秘境あるだわね♠✈ そこへワタシ、パルキムさん連れて行けたらと思うわや♡」

 

「ふぅ〜ん、た、大陸の奥ですけぇ……☹」

 

 やや動揺した感じの気持ちになって、裕志は到津相手にうなずきを返してやった。その理由は自分と同じ人格を持つキマイラとのお別れに、一抹の淋しさを感じ始めているのだ。

 

 この気持ちは隠しようのない本心なのだが、現実的に考えてみても、いっしょの生活は二万パーセント的に不可能。だからここは到津の提案に従って、バルキムが平和に暮らせる地へ送ってもらう方法が、すべてにおいて最良の選択なのかもしれない。

 

「そうだのぉ……やっぱりそうするしか無かんべぇ……☹」

 

 もともとから名案が浮かんでいない様子である静香も、到津の言葉に納得の顔。裕志と同じようにして、大きなうなずきを繰り返していた。

 

「やっぱり到津さんに、バルキムさ大陸に連れてってもらうんだがねぇ☺ これってまあずバルキムさんにとっても、日本にいるより世話ねえべ♪ おんなじ怪物仲間といるほうが、まあずなっから幸せなんだと思うんからんさぁ☀」

 

「う……うん、そうっちゃね★」

 

 ここまで話が進行をすれば、もはや裕志にも異論はなし。むしろ積極的である静香から、ある意味背中を押されている格好でもあった。

 

「じゃ、じゃあ到津さん……バルキムば大陸に連れてってくださいっちゃ☞ ぼくからもお願いばしますけん✊」

 

「あいやあ、わかたあるね☆☆」

 

 到津が長い首を、見た目にわかり過ぎるほどで上下をさせた。


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