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『剣遊記閑話休題編T』

第二章 離れ小島の海の家。

     (8)

「あらやだ☹ 材料が足りんみたいばい☢」

 

 海の家の炊事場で、夕食の仕度に取りかかっていた桃子であった。ところがいざ包丁を握った段階になって、彼女は買いだめしていたつもりの食材が、なくなりかけていることに気がついた。

 

「ドジやねぇ☠ お客さんが来ると、わかっとったとにぃ☠ しょんなかけ、オレがひとっ走り、町まで買いモンに行ってくるばい✈」

 

 こちらも孝治たちのため、海の幸料理に取りかかろうとしていた高須であった。だが妻の『困った😭』発言で、その手をいったん止めた。

 

「で、なんが足らんとや? 米か? それとも野菜け?」

 

 やや焦れかけている高須の言葉に、桃子が頭を横に振った。

 

「それが全部のうならかしたんよねぇ☠ これじゃせっかく来てくれた朋子のお客さんに、今夜は魚しか出すモンがなかよ☁」

 

「それじゃいっちょんお手上げばってん、そげんなんものうなっとんやったら、ふたりで町まで行かんといけんばい✈」

 

「ごめんばいね☁ うっかりしとうたわ☂」

 

 桃子が両手のシワとシワとを合わせ、それから食事の準備を手伝っている姪の朋子に、顔を向けた。

 

「そげんわけばってん、ちょっと留守番ばしてくれんね♠ 対岸の商店街まで買いモンば行ってくるけ、暗{くろ}うなるまでは帰ってこれるっち思うけね♥」

 

「ええ、いいにゃよ♡ あたしん店でもこげにゃこつ、しょっちゅうやりようことにゃけね♡」

 

 海の家の大広間に並べてある折り畳み式のテーブルを布巾で拭きながら、朋子が明るい返事で応じた。

 

 朋子にとってはこれくらいの失敗など、未来亭では日常茶飯事の出来事なのだ。だから叔父と叔母の本土への買い物を、朋子は軽い気持ちで了承する程度の話くらいに感じていた。

 

 このときまでは。


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