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『剣遊記閑話休題編T』

第二章 離れ小島の海の家。

     (5)

「やったぁーーっ! 海っちゃあーーっ♡♡」

 

 多少(?)のひと騒動はあったものの、ともかく念願の海水浴。しかも対岸の芋洗い状態とは無縁な超穴場の貸し切り砂浜とあって、由香や登志子たち未来亭給仕係一同が、ここぞと思う存分、大いに羽根を伸ばしまくった。

 

おまけにほぼ全員が、思いっきりの水着スタイル――色とりどりのビキニを満喫。あの彩乃までが、まさに真夏の青空を思わせるような青いビキニ姿。ここでしつこく繰り返すけど、彼女は一応ヴァンパイアなので。

 

 ただし、上には着用できても下には着られない娘たちもいた。

 

「うわぁーーっ! 砂があっつぅーーい!」

 

 ラミアの真岐子が、胸だけ橙{だいだい}色系のビキニを着用。長い蛇体を砂浜で這わせていた。

 

 さらに、もうひとり。

 

「あれ? 桂のやつ……なして腰んとこばタオルで巻いとうとや?」

 

 砂浜に花模様のパラソルを立ててゴザを敷き、孝治はそこで腰を下ろしていた。孝治は砂浜から波打ち際で遊んでいる給仕係たちを、警護のつもりで見張っているのだ。そこで桂だけが他の由香たちとは違う格好で、まっすぐ海へと向かう様子に気づいて、これに違和感を覚えたわけ。

 

 この桂の行動について答えてくれた者は、座っている孝治の右横で、砂浜にうつ伏せとなって日焼けを楽しんでいる友美であった。友美は孝治に、微笑みながらで桂について教えてくれた。

 

「孝治かて知っちょうくせにぃ♥ 桂がなんやったのか、忘れちょうとぉ?」

 

「うわっち、そうやった☀」

 

 自分でもけっこう鈍感を認識している孝治であった。だけど今の友美のセリフで、すぐにピンと来るモノが。

 

「桂はマーメイドなんよねぇ✌ やけんビキニの下んほうが着れんわけっちゃね✍」

 

 などと今になって事情を思い出した孝治の瞳の前で、桂が砂浜から海中へと、豪快なダイビングをザッバァァァンと決めてくれた。

 

 それから変身は、ほんの一瞬だった。一度海面下に潜った桂がバシャッと海上に顔を出したとき、下半身が見事な緋色の魚体に変形を果たしていた。

 

「早くぅーーっ♡ がいにぃ気持ちええぞなぁ〜〜♡」

 

「桂ぃーーっ! 待っちゃってやぁーーっ!」

 

 人魚娘――桂が大きな声でみんなを呼んだ。すぐに由香たち給仕係がバシャバシャと、砂浜から海中になだれ込んでいった。


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