『剣遊記閑話休題編T』 第二章 離れ小島の海の家。 (2) 今回の主役(?)とも言える朋子を先頭にして、未来亭の面々は小島に上陸した。
ところでいざ乗ってみると、小さく見えていた中型ボートは、意外に大きかった。それも孝治や由香たち総勢八人を乗せて海を渡っても、充分な余裕があったほど。なにしろ図体が一番長くて重い真岐子が乗って(ラミアなので全長が長過ぎ)、ようやく満員となるぐらいであったから。
念のため涼子は幽霊なので、ここでも定員に入っていない。
「おいしゃん、こん人たちが朋子のお友達にゃん♡ どうぞよろしくおにぇがいいたしますにゃんね♡」
まずは代表して、朋子からのご挨拶。それから由香たちも声をそろえた。
「「「どうかよろしくお願いしまぁ〜〜っす♡」」」
「おうおう、バリ元気そうな娘っこたちやねぇ☀」
「朋子ちゃんのおいしゃんねぇ……♋」
孝治の見たところ、朋子の『おいしゃん』なる人物は、気が良さそうで一見若々しく見えていた。だけど、頭の前髪がやや後退しかけているところが、まあ特徴的と言えば特徴的でもあった。
『くすっ♡ あん人、あと何年かの髪の寿命ばいね♥』
「涼子ったらぁ〜〜☂」
いつものごとく、自分の声が聞こえないのを良しとして、涼子がこそっと噴き出していた。それを友美が、そっと自分の口元に右手人差し指を立てる仕草。もちろん幽霊に笑われているなど、夢にも考えていないであろう。おいしゃんがボートを手造り(らしい)桟橋にロープで繋ぎながら、まさに海の男らしい豪快な笑みを一同に向けてくれた。
「まあ、今回こん島は、君らに完全貸し切りにしてやっとうけ、思いっきり遊んで行きんしゃいよ☀ なんせ離れ小島なもんやけ、海の家の賃貸料ががば安かモンやけねぇ〜☁」
「ああ、なるほどっちゃね☀」
別に尋ねてはいなかったのだが、おいしゃんのやや自嘲気味なセリフで、孝治も離れ小島に一軒だけの理由を納得した。
(要するに経済的な問題っちゃね♠)
もっとも孝治の思いには関係なしで、おいしゃんの性格は、とことん明るい部類でいるようだ。家賃の話をすぐ抜きにして、桟橋からポンと、砂浜に飛び移った。
「なんも遠慮ば要らんけね☀ おーーい! お客さんに飲みモンば持ってこんねぇーーっ!」
それから砂浜からおいしゃんが、島でただ一軒建っているだけの海の家に呼びかけた。するとすぐに、威勢の良い返事が戻ってきた。
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