『剣遊記 超現代編U』 第三章 真夏の浜辺の逆ハーレム? (9) 孝治たち三姉妹(?)とおれはけっきょく、軽すぎるナンパ野郎を連れたまま、仲間たちのいる砂浜に戻るしだいとなった。これは前ページのあらすじ。
でもって、メイン会場(?)である砂浜に戻ったとたんに――である。そこには当然ながら、おれたちの帰りを待っていた我が港南工業高校2年B組の、見た目に怖い面々が顔をそろえていた。
「なんやぁ、ニーちゃん☠」
早速で和志が声音にドスを利かせ、サングラスの奥で光る三白眼を駆使して、軽薄ナンパ野郎をギロリとにらみつけた。
この状況は、和志も予測をしていなかっただろう。おまけ付きでおれたちが帰ってきたものだから。むしろサングラス男の反応はある意味、当たり前の成り行きと言えるかも。ついでに付け加えておけば、和志は自分のことは棚に上げて、このような軽薄なナンパ野郎が大嫌いだと、いつも公言しているのだ。現に無期停学の原因となった大ゲンカも、他校のナンパ野郎をボコボコにしたのが理由であるし(彼女の取り合いが大ゲンカの原因とはいえ、ふつうボコボコにするか?)。
さらに他のメンバーたちも、和志と同じような威嚇ぶりを、おれと孝治が連れてきたナンパ野郎にぶつけていた。特に身長が百九十近くはある進一など、表情がたとえおだやかであっても、その威圧効果は充分過ぎだろうな。
「あ、あのぉ……君たちぃ……♋」
完全にビビり上がっているナンパ野郎が、うしろから孝治たち三姉妹に、こっそりと話しかけていた。おれはまたも無視されたが。
「君たちのお友達って、そのぉ……みんな男だったの?」
「そうだよ☀」
孝治はあっけらかんとした態度で答えた。まさに状況がまるでわかっていない、天然娘の本領発揮と言ったところ。
「ど、どうも、しっつ礼しましたぁーーっ!」
けっきょくナンパ野郎は猛ダッシュで、砂浜からダダダッと駆け出した。オリンピック船首も真っ青の快足でもって。
おれはこのあと、すべての事情をみんなに話して納得させた。これはこれで、要らぬ苦労の連続だった。で、おれのお終いのつぶやきが、これ↓。
「孝治のやつ、天然にますますの磨きがかかってやがるなぁ☠☢」 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |