『剣遊記 超現代編U』 第三章 真夏の浜辺の逆ハーレム? (6) それからしばらく、おれと和志はうつ伏せのままで寝ている孝治を前にして、意味のない悶々とした時間を過ごしていた。さらに三十分くらいが経過したころになってワイワイガヤガヤと、孝治のふたりの妹に泳ぎを教えていた、他の面々たちが戻ってきた。
「いやあ、友美ちゃん、筋がいいよ☺ ふつうはプールで泳ぎを覚えるもんなのに、いきなり本番の海に来て、なんと十メートルは泳げるようになるんだからさぁ♋☺」
コーチ役を引き受けていた永二郎が、やや驚き気味の様子で、友美ちゃんを思いっきり褒めまくった。
「あたしも一メートル泳いだでしょ☹」
三女(?)の涼子ちゃんが、ちょっぴりムクレ顔になっているところも、これまたかなりに可愛らしかった。
「なんか、冷てえモノが食いたくなったなぁ☕」
ここで正男が、本当に何気なくの感じでつぶやいたときだった。
「ぼく、買ってくるよ☺」
寝ていたはずの孝治が、いきなりガバッと起き上がった。
「えっ、おい? うわぁーーっ!」
「こっ、孝治っ! おまえ!」
和志が巨大な絶叫声を張り上げた。おれもビックリした。なぜなら孝治はビキニの紐を自分で外していることを、完全に忘れていたからだ。もちろんおれと和志だけではなかった。居並ぶB組の面々の前で思いっきりに、その自慢(?)のDカップを、もろ大公開(トップレス)にした状態なのだ。
「こ、孝治っ! 見えてるっ!」
「ちょっと、お兄ちゃん……じゃないお姉ちゃん! ビキニが落ちてるわよ!」
弘路と友美ちゃんも、大声を張り上げた。
「わひぃーーっ!」
他の野郎どもも、盛大なる鼻血の大噴出。これはもう、赤いシャワーと言ってもいいかも。もちおれも、体内の三分の一の血液を失った(ふつう死ぬ☠)。
ところが肝心の孝治本人は、この超アクシデントに、まるで無頓着の感じ。みんなの大困惑に気づくような、勘の冴える孝治では、ここでもなかった。
「うわっち? 水着が外れてる……☛」
それからようやく認識した感じになって、ごくふつうにビキニの背中の紐を結び直したりした。
とにかくこいつ(孝治)には、周りの大騒ぎな状況が、まるで見えていない感じでいた。それどころか困惑しきっている裕志(鼻血ダラダラ)に顔を向け、孝治は元気の良い声をかけやがった。
「妹たちに泳ぎを教えてくれたお礼だよ☺✌ 近くのコンビニでみんなの分買ってくるから、友美と涼子も手伝って⛴」
「は、はぁ〜〜い……☆」
「はぁ〜〜い☆」
ふたり仲良く、長姉(?)のあとに従った。たった今起こったハプニングなど、もう忘れているかのようだった。
「あっ、おれも行く✈」
女の子たちばかり(?)で多少の心配を感じたおれも、慌てて三人のあとを追った。実際孝治の超天然ぶりからして、さらなる騒動が起きないとも限らないし。
とにかくこれにて、砂浜にはヤローどもばかりが残される結果となった。孝治のDカップをもろに目撃して、全員腑抜けの有様で。これもやっぱり『ザマーミロ✌☻』の部類だ。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |