『剣遊記 超現代編U』 第三章 真夏の浜辺の逆ハーレム? (5) 『ねえ、気持ちいい? 和志さん♡』
『おう、凄く気持ちいいぜ☻』
と、これはおれの妄想。自分で考えて気色が悪いんだけど、きっと和志の頭の中では、このような光景が展開されていることだろう。砂の上でうつ伏せになった和志が、孝治に日焼け止めクリームを塗ってもらうパターン。たぶんであろうが、和志の脳内ではすでに、孝治は身だけでなく心も完全に女性化しているに違いない。こんなおれの妄想を実証するかのようだった。和志の野郎がつぶやいてくれた。
「オレのほうが塗られる……そのシチュエーションも悪かねえ☻☻」
本音が堂々と口から出てやがる。
おっと! このように考えてしまったおれは、思わずで頭を左右にブルブルッと振った。しかも横目でチラリと和志を見れば、口の右端から明らかに涎を垂らしているよ♋ こうなるともはや実証を越えて、確信の域。和志の脳内は完全に、おれの想像どおりで間違いなし。だが一応、このサングラス馬鹿にも理性のカケラは残っていたようだ。ハッといきなり目を覚ますかのようにして、おれと同じくで頭をブルブルブルッと左右に振ったのだから。それからこいつの言い訳イコール詭弁が始まった。
「い、いや! 日焼け止めクリームを背中に塗る役目は、昔っから男性から女性へのサービスって決まってんだよ✊ だからここはオレに塗らせろ! その次で孝治がオレに塗ればいいんだからな✌」
「なに言ってんだ、このおっさん☹」
おれは疑問満載だった。ところが孝治は違った。
「ふ〜ん、そんなもんなのぉ✍」
頭が天然の孝治には、一切の疑問も湧かなかったようなのだ。
「じゃあ、お願いするね♪」
それから完全に納得した感じ。孝治は和志から言われたとおり、マットの上でうつ伏せになった。
おれももはや、止める気はなかった。まあ、これも男の願望のひとつ、美女へのクリーム塗りのサービスである。そんな和志の気持ちが、おれにも嫌と言うほどわかるばかりに。
「も、もちろん! オレに任せろ☻☻☻」
これにて和志は『しめた!』とばかり。右手にクリームをたっぷりと付けて、ビキニの紐を外した孝治の背中に、それをベタベタと塗りまくった。これも端から見る限りでは、特に不自然な光景でもなし(見掛けはふつうの高校生の友達同士)。おれはただ、この奇妙な戯{たわむ}れ現場を、第三者の気分で眺めているだけにしていた。
「どうだ✌ 気持ちいいか✌☻」
ここですっかり調子に乗っているらしい和志が、いかれた口調で孝治に話しかけた。ところが孝治からの返事はなかった。
「あれ?」
おれは不思議に思って、うつ伏せになっている孝治を、上から覗いてみた。
静かなのも当然だった。孝治はあっけなく眠りの世界へと入っていた。スースーという可愛らしい寝息が、これまた魅力的と言えば魅力的なのだが。
「な、なんちゅう寝付きのいいやつなんだよ♋ お楽しみはこれからだっちゅうのにぃ♨」
「なんかよくわからねえんだけど、とにかく残念だったな、和志よぉ♥☻」
和志のほうは、当てが外れてガッカリ丸出し。なんの『当て』だか、簡単に想像できるが。おれはちょっとだけ、『ザマーミロ☻✌』の気分になったりして。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |