『剣遊記 超現代編U』 第三章 真夏の浜辺の逆ハーレム? (19) だが、奇跡は起きた。
「一位を発表いたしまぁーーっす! エントリーナンバー……☻」
つい思わずだが、おれはゴクリとツバを飲んだ。自分でも知らず知らずだったんだけど、おれ自身もしっかりと緊張していたようだ。
ふと横を見れば、2年B組の面々全員。それになぜかライバルに昇格している桃園沙織までが、固唾を飲んだ顔をして押し黙っていた。
そんな重苦しい空気の中だった。ついに優勝者が発表された。
「エントリーナンバー十九番、鞘ヶ谷孝治さんでぇーーっす! 受賞理由は、一見平凡そうに見えて、実は内部に秘めた純情可憐さが、自称『ぼく』など最も際立ったかたちで表現されている清楚さにあるとのことでぇーーっす☀ なにがなんやらわけがわからないんだけど、とにかくおめでとうございまぁーーっす☆☺」
「うわっちぃーーっ!」
今のは孝治が真から驚いた声。もちろんおれも驚いた。和志などもう、自分が勝ったみたいな超喜びよう。
「ゆおーーっし! オレの言ったことは真実だったろうがぁーーっ! 孝治こそ天下一の美少女だぜぇーーっ!✌✌」
気持ちはわかるから、誰彼構わず握手を求めるんじゃないの✊ また反対に桃園沙織は、砂浜に両手と両ひざをついて、ガックリと突っ伏した姿勢となっていた。
「そ、そんな馬鹿な……ですわ♋♋♋ わたしともあろう究極の美女が、このような小娘に全敗するなんて……☁ しかもベストスリーにすら敗れるなんて……✄☂」
見た目にも、心底からショックを受けている感じがありあり。それでも自分が敗北した事実だけは、きちんと受け入れているようだ(あとで聞いた話なんだけど、桃園沙織は二十位だったんだって♋ やっぱりあの超マイクロビキニがあざと過ぎたのかなぁ?♋)
そんな感じで打ちひしがれている彼女の背中に、うしろで控えているふたりのお伴が、そっと緑色のコートをかけていた(なぜコート?)。
「沙織様、あなた様の挑戦は、たった今始まったばかりなんですよ☕」
「そうです☘ あしたのために、きょうの敗戦に耐える☹ それが女というものではございませんか✊✊」
それぞれ泰子と浩子からの、実に優しい言葉掛けだった。この三人、思っていたよりもけっこう絆が深いのかも。
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