『剣遊記 超現代編U』 第三章 真夏の浜辺の逆ハーレム? (18) 「では、審査結果の発表と参りましょう!」
桃園沙織のせいで、なんだかよけいに時間がかかったような印象であるが、ようやく五人の(適当な男女の集まりとしか思えない)審査員たちによる話し合いがまとまったようだ。MCが審査結果の書かれている用紙を受け取って、それを高々と読み上げた。
「上位三名のみの発表となりまぁーーっす☀ まずは三位からでぇーーっす! エントリーナンバー五番の畑三枝子{はた みえこ}さぁーーん!」
会場がドッと沸いた。
「続いて二位、エントリーナンバー十七番、福柳木千恵利{ふくりゅうぎ ちえり}さぁーーん!」
またも会場がドッと沸いた。もっともおれたちは孝治と桃園沙織しか見ていないので、このふたりの印象は、とても薄かった。当人たちには悪いんだけど。
まあそれよりも、いよいよ一位の発表である。
「ま、きっとランク外だろうね☺ ぼくも初めっから無理って思ってたから☺」
客席に戻っておれたちといっしょにいる孝治は、早くも負けた気になっていた。
「いんや! そんなことはない! まだ一位は決まってないからな!」
おれも含め、大方の港南工業高校2年B組の面々は孝治と同じで、『参加することに意義がある✊』で、だいたいの考えはいっしょだったはず。ところが和志のみが、異常なほどの自信に満ちあふれていた。もっともいくら和志に自信があったところで、実際にコンテストに出たのは孝治なのだが。
「審査員の目だって節穴じゃねえ! あいつらも孝治の真の魅力に、とっくに気づいてるはずだ!」
「まあ、大きな自信でありますこと☻」
そんなおれたちの現場に、なぜか桃園沙織が現われた。超マイクロビキニのまま、ふたりのお供も、もちろん連れて。
「来やがったな、ライバル!」
けっこう女ったらしである和志のはずなのに、それこそ自分で言っているとおり、桃園沙織を妙にライバル視していた。これは非常に珍しい出来事だ。
「泣いても笑っても、あと数秒で結果が出るんだからな☎ 今さらジタバタするなってえの✋」
「ほほほっ☻ それならば笑うのがわたしたちで、泣くのがあなたたちってことで決まりですわね☻☻」
桃園沙織がさらに高笑いのボルテージを上げた。正直言っておれは、彼女の言うとおりになるだろうなぁ――と、このときは思っていた。
ほんの数秒後の奇跡も知らずに。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |