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『剣遊記 超現代編U』

第三章 真夏の浜辺の逆ハーレム?

     (15)

 美少女水着コンテストは出場希望者が二十人ほどとなり、運営の予定どおりに始まった。

 

 この二十人の中に混じっている、唯一に違いない元男子の孝治である。しかしこれがまた何度も言うが見事なほどに、周囲と見比べてまるで遜色も違和感もなかった。むしろ超マイクロビキニをただひとりで貫いている桃園沙織のほうが、完全にコンテストの雰囲気から浮いているんじゃないか? ――と思えるほどだった。

 

 コンテストの会場は、周辺を海の家に囲まれている砂浜の上に、簡単なステージが組み立てられて行なわれた。そのステージにくじで決まった順番で、次々と水着――それも百パーセントビキニばかりの美女たちが、代わる代わるにファッションショーのような雰囲気で、観客(これも百パーセントがエロなヤローばかり。おれたちもだけど)の熱い声援を浴びていた。

 

 この順番で孝治はドンツーの十九番目であり、桃園沙織はビリッケツの二十番目だった。これはくじの順番で公平に決まったと言うが、おれはこの順番決めに、なにか作為のようなものを感じていた。この邪推はとにかく置いて、コンテストはすいすいと進み、早くも十九番目である孝治の出番となった。

 

「それではエントリーナンバー十九番の方、名前はさやがたに、こう……じ、でいいんですかねぇ?」

 

 海パンの上に青のアロハシャツを着ているMCが、孝治を呼んで、一瞬言葉を詰まらせた。その理由は、おれにもすぐにわかった。『孝治』なる男性名が、MCによる紹介に引っ掛かったのだ。

 

「は、はい……ぼくはぁ鞘ヶ谷……孝治と言います☁」

 

 孝治がモジモジしながら、ステージの真ん中に出てきた。とたんにMCのテンションが上がった。

 

「おおっ! これはまた見事な『ぼくっ娘{こ}』のご登場ですなぁ☀ それでぼくっ娘の君、こんなに可愛いのに、どうしてぼくっ娘のみならず、名前まで男の子みたいになってるの?

 

「そ、それはぁ……そのぉ……♋」

 

 初めの予想どおりであったが、孝治のやつ、MCから一番重要なことを訊かれ、思いっきりおどおどとした態度になってやがる。

 

 まあ無理もない。性転換などの異常な事態がなければ、一生上がらずに済んだようなステージの上なのだ。これで堂々としろと言われたところで、立場が変わればおれだって同じ、おどおど状態になっていただろう。ましてや、今さら気づいても後の祭りなのだが、孝治もおれたちもそのまま、本名のままでコンテストに参加をしてしまったのだ。

 

 孝治が天然なのはもうわかっていたが、これではおれたちも同類ではないか。

 

「孝治っ、頑張れよぉ!」

 

「おれたちが付いてるからなぁ!」

 

 観客席から、その同類たるおれたち港南工業高校2年B組の面々が、またもや無責任極まる声援を送るのだが、果たして今の孝治の耳まで届いているものやら(そもそもおれたちが付いてなんになる?)。実際にステージ上では孝治がMCからいろいろと質問攻めにあっているものの、そのほとんどにしどろもどろでしか答えられないでいるから。


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