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『剣遊記 超現代編U』

第三章 真夏の浜辺の逆ハーレム?

     (1)

「おまえ、本当に鞘ヶ谷孝治なのか?」

 

「う、うん……♋」

 

 教室でいきなり瞳の前にサングラス😎の伊達男が現われ、孝治もさぞ、息を飲んだに違いない(初対面の関係ではないのだが☢)。

 

 その和志の三白眼が、孝治の頭のてっぺんから足のつま先まで、上から順にジロジロと眺め回す(ちょうど机に座ってなかったタイミングもよくなかった☠)。たぶん孝治の背中は、冷たい氷河がドドドッと雪崩落ちていることだろう。これはおれにもよくわかった。しかもこのとき、明らかに和志がつぶやいたであろうセリフの一部が、おれの耳まで届いていた。

 

「か、可愛いじゃねえか……♋♡」

 

 こりゃヤバい☠――と危険を察知したおれは、速攻で孝治に助け船をしてやった。

 

「ま、まあ、和志も停学解除早々に信じられんのもわかるけど、ここにいる孝治は本っ当に、性転換ってやつをやってしまったんだよなぁ♡ とにかくさぁ、真実は目の前で起きてるわけであってさぁ

 

 我ながら、苦しい言い訳じみた『助け船』だ。それでも、おれが言っても和志のやつはまだ、自分の目の前で起きている現実を、しっかりと把握――もしくは認識できかねているようだ。

 

「『せいてんかん』だとぉ?」

 

 しかし本当の現実として、和志のサングラスの前には、以前にもおれ自身が目撃をしたんだけど、孝治のたわわに実ったDカップの豊乳が、今もデデンと広い突き出し方でもって、体の前方にドカンと出っ張っているのだ(制服の上から見ても、はっきりとわかるほどに)。これが理由かどうかは神のみぞ知るところなのだが、和志が突然わめきだしやがった。

 

「ゆおーーっし! 今度の日曜、孝治とオレたちで海に行こう! 今決定、本決まり! オレに賛同する者、右手を挙げろぉーーっ!」

 

「ええっ? どういう展開!?」

 

 おれは動転しまくった。

 

「うわっち!?」

 

孝治もだ。だけどそんなおれと孝治などまるで関係なしに、クラスの空気は和志の方向に流れていた。

 

「うおーーっ!」

 

「おれも、おれも!」

 

「いっしょに行くぅーーっ!」

 

 クラス全員――とまでは行かなかった。だけどたちまち、十本近い右手が、それこそ雨後のタケノコのように林立した。

 

「孝治、なんか変な話になってきたなぁ☠」

 

 おれは『やれやれ☁』の思いになって、孝治にそっとささやいてみた。すると意外にも、孝治自身が乗り気になっていた。

 

「海に行くんだったら、水着はこの前のスクール水着でいいかなぁ?」

 

「なぬっ!?」

 

 おれは思った。

 

(わっ! 孝治のやつ、やっぱ天然だよ☢ 和志……だけじゃねえ、みんなのスケベ心に気づいてねえ☠)

 

 それからもちろんではあるが、おれ以上に和志の反応(孝治の水着着用について)は過激でいた。

 

「スクール水着ぃ? ちがぁーーうだろっ! ビキニだ! ビキニ以外にオレはずえったいに認めねえ!」

 

 和志はすぐ周りに目線を変え、とんでもない発言までやらかした。

 

「おい! みんな、寄付だ! 孝治にビキニを着らせるために、参加者全員でカンパを集めるんだよぉ! オレたちのわがままのために、孝治ひとりに金を使わせるわけにはいかねえからな!」

 

「無茶苦茶言ってるよ、このサングラスバカは

 

 おれは心底から呆れた。それでもカンパは、たちまち集まったりもする(各言うおれも、実は千円出したりして✌)。これにて孝治は嫌でも(そんなに嫌がってるようでもないが☻)、ビキニ👙着用必然の顛末となったわけ。


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