『剣遊記11』 第二章 グリフォン救済計画。 (6) 「あなた方が店長はんの従妹であられる沙織はんどすな♥ これはこれはまあ、よろしゅうお願い申し上げますさかい☆ うちは魔術を生業としてはります、天籟寺美奈子と申しまんのや♥ 今回は縁あって、旅を同行させてもらいますえ♣ それとまあ、ここにおりはるんが……」
「はぁーーい☀ 千夏ちゃんでぇーーっす☀ よっろしくお願いいたしますさんですうぅぅぅ♡♡」
「千夏ぅ、千秋にもしゃべらせんかぁい!」
「はぁ……ど、どうぞ、よろしく……☁」
(双子の話は聞いてたんだけどぉ……こうも好対照なんてねぇ……♤♢)
沙織たち三人娘と美奈子たち魔術師師弟による初対面のご挨拶は、常夏太陽娘――千夏の超天真爛漫に圧倒されたかたちで、なんとか無事(?)に執り行なわれた。
孝治は初め、合計六人の初顔合わせを、おもしろおかしく見物していた。それから友美と涼子相手に、そっとささやいた。
「さっすが、店長の親戚っちゅうか一族も、千夏ちゃんの前やとタジタジってとこばいね♥」
友美も孝治の右肩に寄り添って、六人の女性たちのやり取りを眺めていた。
「ほんなこつそうっちゃねぇ☀ でも千夏ちゃん、浩子さんとは気が合{お}うとうみたいっちゃよ✌」
友美の言うとおり、確かにハーピーの浩子と千夏が、やけに親しそうな感じで雑談をしていた。
「ほんとや☞」
孝治も感心してうなずいた。その当のふたり(浩子と千夏)は、次のような会話を交わしていた。
「わん元気いいでんいぇー♡ いったい歳{とし}いくつかし?」
「はぁーーっい♡ 千夏ちゃんはぁ、十四歳ですうぅぅぅ☀」
「うっそぉ〜〜っ! あたし、十歳くらいって思いよったでんいぇー?」
などと、いかにも珍しいモノを拝見するような瞳で、浩子が翼を広げながら、千夏の周りをトコトコと歩き回った。猛禽類の両足で。だけど周られているほうだって、全然負けてはいなかった。
「浩子ちゃんはぁ、千夏ちゃんよりもぉ、ずっと歳上さんなんでしょう? でもぉ、千夏ちゃんよりぃ、身長さんがぁちっちゃいですうぅぅぅ☀」
「そりゃ、しょーがあらへんがな☟ ハーピー族は飛ぶために、体格が小{ちい}そう進化したんやからなぁ✍」
ここで姉の千秋が、会話に入ってきた。だけど浩子のほうは、やや苦笑気味の顔だった。
「ま、まあ、あんでんねーことなんだけど、おいさなんよねぇ✄✍」
確かに千秋の言うとおり、浩子の頭の位置は、双子姉妹の胸にまでしか達していなかった。それでも双子姉妹に負けてなるものかと言いたいらしい。両手の翼を左右に、パッと広げてみせたりしていた。
「あたしはしょうがないっしょ☆ だってハーピーなんだもん✈ その分空飛べるから、小さい体は進化の行き着く先でんいぇー✈」
それからさらにムキとなったのか。両方の翼をバタバタと羽ばたかせ、千秋、千夏の頭上に舞い上がった。だけれど逆に、これを無邪気に喜ぶところが、双子姉妹の所以たるところでもあった。
「うわぁ☀ ハーピーさんってぇ、ほんとにお空を飛べるんですねぇ☀ 千夏ちゃんとってもぉとってもぉ、うらやましいさんですうぅぅぅ♡♡」
「見てみいや☝ 千秋の言うとおりやろ✍」
「……ふふっ♥ ま、まあ、そうだいねぇ♥」
これにて浩子の表情が、ややゆるんだ感じになってきた。しかしこれで、三人が本当に親しくなれたのかどうか。まだなんとなく皆目不明と言ったところ。それでも姉妹の誉め言葉ひとつで機嫌を直したところだけを見れば、これはこれで旅の幸先は良さそうな空気であろう。またこの三人(浩子、千秋、千夏)は脇に置いて、やはり女性同士。気が合うようだった。今度は沙織が美奈子に魔術の話を、これまたいろいろと尋ねていた。さらに美奈子は美奈子で、泰子にシルフの一族について、幅の広い質問を尋ね返してもいた。
「実はわたしも、大学で魔術を勉強してるんですけど、まだまだ免許皆伝とは、なかなか行かないんですよねぇ♡」
「そうどすか♥ 修行の道はとても厳しゅうおますさかい、とにかく修練が基本でおます☜ ところで泰子はんはシルフやと聞いておまんのやけど、やはり風とくれば、あらゆる精霊の中でもトップクラスの腕前なんどすえ?」
「……と言われてもぉ、わたす生まれたときからシルフっけ、そんただことわかんねえだぁ☻」
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