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『剣遊記11』

第二章 グリフォン救済計画。

     (2)

 これも恒例で、同時刻。未来亭三百二十一号室では、部屋の住人である高塔千秋{たかとう ちあき}と千夏{ちなつ}の姉妹が、せっせと旅の荷造りを急いでいた。

 

「よっしゃ♡ これでええやろ♡ なんせ今度の旅も、ずっと遠くに行きよるさかいになぁ☀」

 

「ほんとさんですうぅぅぅ♡♡ だからぁ、お服の着替えさん、たくさんたくさん持ってかないといけませんですうぅぅぅ☀」

 

 姉の千秋は長い髪をうしろで束ねた(いわゆるポニーテール)、野生的野伏風衣装が似合う女の子。反対に妹の千夏は、茶色の髪に大きなヒマワリのアクセサリーブローチが特徴的な、今どき都会風(?)女の子。見てもわかるとおりに(文章だけど😅)両極端なふたりであるが、これでも立派な双子の姉妹。だから見かけと服装はとにかく、背格好と容姿は、まさに生き写しと言っても良いであろう。そのふたりがお互いに額の汗をハンカチで拭き拭きしながら、着替えなどを詰めた大型カバンを、力任せ(体重任せ)でバチンと閉じていた。要するにふたりがかりでカバンの上に乗っかかり、上からギュッと抑えつけたわけ。

 

 ちなみにカバンの中身は、彼女たち自身の服などが多数。また同じ柄である黒いマントのような衣装が、これまた何枚も重ねて詰め込まれていた。

 

 どうやらこれが、彼女たち――そう三人(?)の旅仕度の模様であった。少々の大荷物にはなるが、姉妹は荷役用のロバも飼っていた。そのためこれくらいの重荷など、ロバ任せではあるが、ふだんから手慣れたものになっていた。

 

「なっ、これでええやろ♡ 師匠☆」

 

 とりあえず荷造り完了のところで、姉の千秋がニッコリと微笑んだ。それから部屋に備え付けの、入り口から見て左側のベッドの顔を向けた。

 

 かなり遅まきながら、室内の概要を説明しよう。現在三百二十一号室には、千秋と千夏の双子姉妹が在室していた。

 

 しかも――である。ふたりが大きめのクリクリとした瞳を向けた左側ベッドの上では、なにやら白くて長いモノが蠢いていた。

 

 それがさらに、姉妹の呼びかけに反応したらしい。長い鎌首をニョロッと持ち上げる動作。おまけに二股に分かれた赤い舌を、これ見よがしにチロチロと出し入れしながらで。

 

 そいつは全身が白色のコブラであった。猛毒で悪名高いキングコブラが、年端もいかない幼女たち(?)と、同じ部屋に同居しているのだ。


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