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『剣遊記11』

第二章 グリフォン救済計画。

     (14)

 今回のキャラバン隊の目的は、厳重な保護下にあるグリフォンを、深山の生息地に帰す役割である。しかし、そのグリフォンがどうして、はるばる遠い北九州市から旅立つようになっているのか。その理由は密猟によって捕獲をされ、遠路九州の地まで転売をされてきたからである。

 

 グリフォン{鷲頭獅子}は、その和名が示すとおり、上半身はワシで下半身がライオンの姿をした、肉食の大型猛獣なのだ。

 

 これはいったい、どのような進化を遂げたら、このような生物が誕生できるものやら。それは誰にも、皆目わからなかった。ただとにかく、その個体数が極端に少ないので、希少の獣である事実だけは間違いないだろう。

 

 ところが世の中は良くしたもの。このような猛獣でも、幼獣のうちに捕まえて飼い馴らせば、主人の命令によく従う従順な愛玩動物となったりする。おまけに均整の取れた美しい姿と、黄金色に輝く羽毛。さらに毛皮までも身に付けた結果、一部の貴族や高級官僚たちの間で密かに高値で取り引きをされ、それこそが密猟を横行させる原因となっていた。

 

 折尾の仕事は、希少獣であるグリフォンを、これら違法所有者の手から救い出し、なおかつ野生で生きられるように特訓をして、野に放つ事業にあった。

 

「やけん、グリフォンば没収された連中が逆恨みばして取り返しに来たりっとか。あるいは再び密猟者が襲撃かけてくるかもしれんから、おれたちが護衛ばしようとでしょ♐ やきーそげなこと、しっかりと肝に据えちょりますばい✌」

 

 孝治は打ち合わせ時での主旨説明(折尾が言った)を一語一句思い出しながら、得々とした調子で帆柱に返答した。とにかく性格の厳しいケンタウロスの前では、これくらいの知識を述べておかないと、あとでまたどやされる結果になりかねないものだから。

 

「よっしゃ☀ まあ今ん段階やったら、まずは及第点すれすれの解答っちしとくっちゃね♠」

 

 とりあえず帆柱は、孝治の返答を納得の感じで聞いてくれた。しかし、本当に言いたい話の内容は、むしろこの先のようだった。

 

「そこで、俺が初めに訊いた美奈子たちのことなんだが……☞」

 

「その三人ですかぁ……?」

 

 ようやく話が本題に入ったらしいところで、孝治はなんだか神妙な気持ちになってきた。無論孝治の内心など知ったことかで、帆柱が話を始めてくれた。

 

「俺が聞いちょう彼女たちの本来の仕事は、福井県のもうひとつ先になる石川県の貴族の家に代々伝わる、お宝の鑑定依頼やろうも☞ 今回たまたま行程が同じもんやけ途中までの同伴で良かったかずなんやが、グリフォンの山までいっしょに同行ば申し出たんが、俺にはどげんしたかて解せんとやけどなぁ……☁」


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