『剣遊記11』 第二章 グリフォン救済計画。 (13) 「どげんや? 女性陣は仲良うしとうとや?」
孝治と同じで、帆柱も徒歩でキャラバン隊に随行していた。もっとも彼の場合、ケンタウロスの体型では、もともとからどのような陸上の乗り物にも乗れない事情があった。その帆柱が、孝治に話しかけてきた。孝治はすぐに顔を上に上げ、先輩に応えた。
「ええ、今んとこは仲良うおとなしゅうしちょうみたいですよ♡ やっぱ女ん子同士、気が合うみたいですねぇ♡」
「そげん心配でしたら、わたしが様子ば見てきましょうか?」
孝治と並んで歩いている友美が二台目の牛車に顔を向けると、帆柱は照れ臭そうにして頭を横に振った。
「い、いや……それには及ばんけ✄ なんもなかったら、それでええけ……☺」
このように帆柱がどことなく口澱む様を見て、孝治の頭に、ピンと閃くモノ💡があった。
「先輩、沙織さんのことが気になるとでしょ♡ そもそも沙織さんが同行ば言い出したんは、先輩に憧れたせいなんですからねぇ♡」
「ば、ば、馬っ鹿もん! そげなんやなか!」
とたんに顔面真っ赤となって、帆柱が慌てた感じで、頭をさらに強く左右に振った。もっともこれでは、自分ですべてを認めたも同然と言えよう。
(やっぱやねぇ〜〜♡)
孝治は内心で、してやったりと、ほくそ笑んでやった。そんな後輩を上から見下ろしつつ、これまた真っ赤な顔のままで、帆柱が声音を強めて言った。
「お、俺が言いたかっちゅうのはやなぁ! 美奈子さんと千秋と千夏んことばい!」
「美奈子さんと千秋と千夏ちゃんですか?」
「そん三人が、どげんかしたとですか?」
話のすり替えが、あまりにも明瞭。しかし、一応こちらのほうの理由も、聞かないわけにはいかなかった。孝治と友美、ついでにこっそりと話に加わっている涼子(ものすごくくどいけど、帆柱には見えていない)も、そろって聞き耳を先輩に向けた。すると帆柱は、今度は声を潜め、ふたり(と幽霊)にこそっとささやいた。
「……まず基本から訊いちょくが、俺たちの今度の旅の目的はなんや?」
「目的ですか?」
これは初めっから、正解がわかりきっている質問だった。それよりも帆柱は、なんだか孝治を試している感じでいた。
孝治はこれに、自信たっぷりで応じてやった。
「そりゃはっきりしちょりますよ☀ グリフォンば生息地である山ん中まで運ぶ途中で、山賊とか密猟者なんかからの襲撃から守ることなんでしょ♐ もう何べんも、その件で打ち合わせばしちょりますけんね✌」 (C)2014 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |