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『剣遊記11』

第二章 グリフォン救済計画。

     (10)

 そんな三人(孝治、友美、涼子)を脇にして、当のノール――折尾が、帆柱に尋ねていた。

 

「ちょっといいか、帆柱☝」

 

「なんね?」

 

 背丈が高いので、帆柱のほうが、グッと身をかがめる格好。逆に折尾は、思いっきりに背伸びをした感じ。

 

「今回、おまえさんが同行してくれるのはいいとして、おまえ以外の戦士から魔術師全員が女性ばっかりと言うのは、こりゃまた変わった編成なんだが……これはなんか理由でもあるのか?」

 

「いや……特別にこげんなったわけでもなかとやが……☻」

 

 帆柱が苦笑した。

 

「それもそうっちゃねぇ……✍」

 

 ふたりの会話を耳に入れ、孝治も改めて考えてみた。

 

 言われてみれば、まさにそのとおり。美奈子を筆頭に、千秋、千夏、友美と、魔術師は全員女性。また戦士も帆柱の連れは孝治だけなので、多少の問題(?)はあるが、やはり女性なのだ。

 

 ついでに(角付き)ロバであるトラもメス。

 

 なお、沙織、泰子、浩子の三人娘はあくまでも飛び入り参加なので、今回は特別同伴者としての扱いになっていた。また幽霊の涼子の場合は気の毒なのだが、初めっから数には入っていない。

 

「ふぅ〜む……☺」

 

 こちらも改めて一同の顔ぶれを眺め回しながら、ケンタウロスの戦士――帆柱が、ノールの野生動物保護管理官からの問いに答えた。

 

「……まあこれは店長の方針で、未来亭では男女の区別なしで同質の勤務が義務付けられとうとよ✍ それで今回はこげな風な面々になったっちゅうことたい♐ もちろん彼女たちがヘタな男どもよか何十倍も頼りになるっちゅうことば、こん俺が保証するけね✌」

 

「おまえがそこまで言うんだったら、きっとそのとおりだろうな✌」

 

 説明を受けて、折尾も一応納得らしい顔になった。

 

 相変わらずヒョウの顔ではわかりづらいのだが。

 

 それはとにかくとして、孝治にはまだまだ計り知れないのだけど、このふたり(帆柱と折尾)の間には、なにかとても大きな信頼関係が出来上がっているようでいた。ただし、たったひとつだけ。帆柱が折尾には説明していない話があった。それは孝治の元男性問題――に尽きていた。

 

 理由は次のような話。

 

「今回の仕事には全然関係にゃーことだし、わざわざ教えても全然意味がにゃーがね」

 

 黒崎の、このよけいなるひと言で、またもや依頼人に孝治性転換の事実は伏せられていた。

 

 もっともそれを言うなら、冒険仕事すべてに、まったく関係をしない話だけれど。

 

「そりゃ男やろうと女やろうと、おれは仕事ばキッチリこなすだけやけね☁ そやかて隠し事って、けっこうしんどいっちゃねぇ〜〜☠」

 

 孝治の偽らざる本音であった。


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