『剣遊記13』 第五章 「ごめんなさい(すんまへん)」のあとで。 (8) 「おおーーっ! これはこれは我が花嫁候補ではないかね☆ そなたも今回の大手柄者というわけでございますなぁ☀」
秋恵ボートに接近してきた一番船には、やはりと言うべきか。大門が舳先に仁王立ちしていた。つまりひとりタイタニック。
「……ど、どうも……☁」
隊長を迎える孝治は、もう顔面真っ赤の極致でいた。なにしろ今の自分の格好が、先ほど前述したとおり。友美にある程度直してもらったとは言え、ドレスのつぎはぎで大事な二箇所(?)のみを隠した、完全なビキニスタイルであるからだ。
これを見た大門は、これまた『やはり☠』で、想定内の勘違いをしてくれた。
「いやぁ、この広い大海原のド真ん中じゃからのぉ、そのような開放的な気分もまた、大いに理解できるものですぞ☀ ぬわっはははははははっ☆☆☆ 今回のあなた様の大手柄、わしからものちほど勲章を差し上げる手配をいたしましょうぞ☆♡♡」
(そげなんええけ、しゃべりながらツバ飛ばすの、やめてほしいっちゃね⚠ ついでやけどおっさん、鼻血が出ようっちゃよ☠ おれのビキニ姿ば、じっくり眺め回してからにぃ☢)
孝治は大門の吠え声を、右の耳から左の耳へと通過させていた。だから彼の言葉など、記憶には一片も残らなかった。さらに大門の興味を、元の本業に戻す努力も怠らなかった。
「そ、それよか、フライング・コンドルの連中はあっちの海んほうに浮かんでますけ、早よ逮捕しに行ったほうがええっち思いますっちゃよ♐」
「おっと、そうだったな⛑⚠」
仕事となれば、大門もすぐ、正気に戻ってくれた。これだけは孝治の感じる大門の、実に有り難い性格と言えた。ちなみに孝治の足元では、白いコブラ(美奈子)が事態の成り行きを、おもしろそうに眺めながら徘徊中。しかし大門はボートに毒蛇のコブラが同乗している状況など、これまたまったく関知していないようだった。
やはり現状認識のにぶさは、昔っから一ミリも変わっとらんばい――と申すべきだろうか。孝治など先ほどから、身震いが止まらない思いでいるのだが。 (C)2015 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |