前のページへ     トップに戻る     次のページへ


『剣遊記13』

第五章 「ごめんなさい(すんまへん)」のあとで。

     (24)

 孝治はポツリとささやいた。

 

「行っちゃったばいね☞」

 

 遠目で見た感じではあるが、どうやら美奈子たちに追いついたようである。そんな秋恵のうしろ姿をやはり遠くから眺めつつ、友美もポツリとささやいた。

 

「遠いけようわからんちゃけど、美奈子さんも千秋ちゃんも千夏ちゃんも、秋恵ちゃんば歓迎しようみたいっちゃねぇ これなら幸先ええみたいばい☀

 

「まっ、こっちが心配することなんか、いっちょもなかっちゅうことやね♥」

 

 一抹の不安はあったものの、確かに友美の言うとおり、杞憂で済んだ模様である。秋恵は美奈子と双子姉妹の三人から、快く仲間として迎えられたようだ。孝治は密かに、ほっと胸を撫で下ろした。

 

「さて、律子ちゃんになんち言い訳したらよかっちゃかねぇ?」

 

 さらに当面の問題も思い出し、孝治は自分の両側に立つ友美と涼子に尋ねてみた。

 

 涼子がニコリと微笑んでくれた。

 

『あたしが思うには、律子ちゃんかて賛成してくれるんやなか? いつまでも箱入り娘にしとくわけにはいかんのやけ★』

 

「これもわたしかて同意見やね

 

「うん、そうっちゃね☆」

 

 きょうはなぜだか、妙に意見の一致する三人(涼子、友美、孝治)であった。

 

「と、言うところで、今回の話はお開きっちゃね☀ それよかまた店長に、新しい仕事ばもらわんといけんちゃよ おれたちの財政かて、そろそろピンチになりようけねぇ☻

 

 ここで今、ストーリーの終焉を感じた孝治は、すでに見えなくなっている美奈子たちの方向に背中を向け、未来亭の店内に戻ろうとした。

 

 そこへ――だった。遥か上空より響き渡る、聞き覚えのある美声(?)の大音響。

 

「美奈子さぁーーん!」


前のページへ     トップに戻る     次のページへ


(C)2015 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved.

 

inserted by FC2 system