前のページへ     トップに戻る     次のページへ


『剣遊記13』

第五章 「ごめんなさい(すんまへん)」のあとで。

     (23)

「わたしも同感っちゃね 美奈子さん、あれでいっちょも根に持たんタイプやけ☀

 

 友美もやはり、孝治・涼子と同一だった。こうなると、話の蚊帳の外にいる者は、今回お終いまで付き合ってくれた、新人盗賊の秋恵ちゃんだけとなるだろう。

 

 その秋恵ちゃんが、孝治たちの話とは関連性のない感じで、ふたり(孝治と友美)に顔を向けた。もちろん涼子の存在は知らないだろうから。

 

「あたし……あの美奈子さんに付いて行ってもええやろっか? なんかあたしも旅に出とうなったとばってん……

 

「そうけ♡」

 

 秋恵のこの突然の申し出に、孝治は自分でも不思議に感じられるほど、寛容な気持ちになっていた。

 

「いつまでも未来亭の周辺ばっかおらんで、もっと遠いとこに行きとうなったっちゃね✈ そん気持ち、おれにもわかるっちゃよ♥☆」

 

「すんましぇん、孝治先輩、急にわがままん気持ちになってしもうて☀」

 

 秋恵はペコリと頭を下げた。その意思が本物である証しは、彼女の瞳を見れば充分だった。

 

「ええよ、行ってき☞ なんやったら今からおれが、美奈子さんに頼んでもよかっちゃけ

 

 孝治はやはり親切のつもりで、秋恵に仲介を申し出てやった。しかし彼女は、頭をブルブルの横振りで応じ返してくれた。

 

「いえ、これは自分で頼んできますけ やっぱこれくらい、自分で言わんといけんですけ

 

「そうっちゃね✍」

 

 この気持ちも、やはり先ほどからと同じ。孝治には充分以上に伝わるモノがあった。

 

「それじゃ、行ってきますばい!」

 

 秋恵はすぐに、未来亭正面から猛ダッシュ。駆け足で先行している美奈子たちのあとを追っていった。


前のページへ     トップに戻る     次のページへ


(C)2015 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved.

 

inserted by FC2 system