『剣遊記13』 第五章 「ごめんなさい(すんまへん)」のあとで。 (22) 「ほな、行ってくるよってに☺」
「ネーちゃん、留守を頼んだで☻」
「千夏ちゃんも行ってきますさんですうぅぅぅ☆☀♡」
東京へと旅立つ美奈子、千秋、千夏の三人が、声をそろえて手を振った。彼女たちにはもう一頭、いつもの角付きロバのトラ(ユニコーンとの混血)が、今回も同行して荷物運びを担当していた。
「行ってらっしゃぁーーい☺」
「気をつけてねぇ♡」
『聞こえてないっち思うっちゃけど、あたしも応援ばしちょるけねぇ♐♡』
旅に出る美奈子たちを見送る者は、孝治と友美と幽霊の涼子。それに秋恵も同伴していた。
美奈子はお見合いの席での覗きの件を、すっかり水に流しているようだった。孝治たちの見送りに、きちんとした感謝の気持ちを表わして、ペコリと頭を下げていた。
もっとも孝治としては、あの日の美奈子の怒りが、今も恐怖となって胸に沁み付いているのだが。
「美奈子さん、ほんなこつ腹かいたらしゅうて、おれが気ぃついたら、なしてか喫茶店がバラバラになっとったけねぇ☠ けっきょく店長と若戸さんで折半ばして、弁償っちゅうことになったとらしいとやけど☢✄ ほんなこつ若戸さんがオーナーやなかったら全額未来亭持ちで、おれの仕事の報酬も、そーとー減額されるとこやったばい💀💀」
記憶があやふやでも孝治はいまだ、体の震えが収まっていなかった。それでも本日、美奈子の見送りに出た理由は、彼女が本心から水に流しているのかどうかを、この瞳で確認したいからでもあった。
「あの笑い顔ば見たら、一応気は済んじょるみたいばいねぇ⛱ まあ、今度の冒険から帰ってきたときにゃあ、もうほんなこつ全部忘れちょうっち思うっちゃけど⛐⛔」
『とりあえず胸ば撫で下ろしとき☻ あたしの考えかて孝治とおんなじっちゃけ☚』
うしろから涼子が、孝治の背中を押すような感じでささやいてくれた。 (C)2015 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |