『剣遊記13』 第五章 「ごめんなさい(すんまへん)」のあとで。 (17) 「で、僕のほうからの返答なんですがぁ……美奈子さんが言われたとおり、僕からも無かったことにいたします☁」
「ほんま……それでよろしゅうおまんのかいな☁☁」
美奈子は自分自身を改めるような気持ちになって、真正面の若戸へと瞳を向けた。しかし若戸は、美奈子自身で次に出そうと思っていた言葉を、右手の手の平を前に出して止めさせてくれた。
「いえ……これ以上はおっしゃらなくてもわかります♢ いや、それ以前に僕のほうから美奈子さんに、今回の件についてはっきりとした返事とお詫びをお返ししたいと思います⚐」
「へっ?」
美奈子は瞳が点の思いとなった。自分自身の本心は、この際はっきりと決まり済み。すでに口からも出していた。あとは一点の曇り無しできちんと、すべてを丸く収めるタイミングのみを、ずっと考え続けていた――と言うべきか。
気持ちを完全に吹っ切れさせるため――このような感じであるのかもしれない。
だがそれよりも早く、若戸のほうから、なにか重大そうな発言が始まったわけ。ある意味、先制パンチのようなもの。
「美奈子さん、それに黒崎店長を始めとする未来亭の皆さん、本日は大変申し訳ないのですが繰り返します☚☛ 今まであったこの話、すべて無かったことにしてください⛔」
「ええっ?」
美奈子は再び――しかも今度は思いっきりに瞳が点。
「あちゃあーーっ?」
「まあ、そ、それでよろしかですけ?」
千秋と勝美が、そろって口をポカンとさせた。また千夏は千夏で、今の状況が果たしてわかっているのか、いないのか。
「すみましぇ〜〜ん☺ オレンジジュースのお代わりさん、いいですかぁ☺☺ きゃっきゃっ! ヨーゼフちゃん、そんなに千夏ちゃんのお顔ぉ、舐めないでくだしゃいですうぅぅぅ👅👅👅」
喫茶店のメイドにジュースの追加を頼みつつ、今も若戸のペットとじゃれついていた。さっきまで美奈子の新しい事実(舞妓の修行もしていた)を知ったばかりなのに、その辺の話題は、とっくに頭から消えているらしかった。 (C)2015 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |