『剣遊記W』 第四章 激! ワイバーン捕獲死闘編。 (14) 「うわっちぃーーっ!」
もちろん孝治も仰天。しかし事態は一変していた。
「うわっち?」
孝治は瞳をしっかりと開いて、現状を再認識した。どうやら肝心の出口が、やはり大きな体格に合わないようだ。その理由でワイバーンは、首から先の部分しか外に出せないようで、必死の悪戦苦闘を孝治たちの見ている前でやらかしていた。それでも自慢であろう長い首を思いっきり伸ばしているようだが、やはり孝治たちを鋭い牙でとらえることができないらしい。
「や、やったぁ……これで逃げられるっちゃね☠♡♡」
孝治はほっとひと息吐いた。だけどこの世は、やっぱり甘くなかった。ワイバーンのくやしまぎれだろうか。ボアアアアアアアアアッと周辺に、火炎の吐き散らしを再開させた。
さらに必死を飛び越えた感じで胴体を洞窟から出そうと、悪戦苦闘プラスの奮闘大努力も続けていた。
このままでは本当に、山そのものを崩してしまいそうな執念で。
「ヤバかぁ〜〜! まだ追ってくる気ばいねぇ☠」
「まだまだ逃げなあかんでぇ!」
無鉄砲では似た者同士である荒生田と沢見も、共に危険を感じたご様子。
「は、早よ逃げましょう! ワイバーン狩りなんち、二度とやらんでぇーーっ!」
完全な臆病風邪に吹かれている裕志が女々しく泣きわめく醜態も、これはこれで、もはや無理はないともいえた。
だが遅かった。
「こ、ここは一時戦略的撤退やぁーーっ!」
要するにしっぽを巻いて逃げる策を、沢見が叫んだ。それと同時にワイバーンがズガガガガアアアアアアアアンンンッと、洞窟から半身を乗り出した。
これで全身が出てくる展開も、時間の問題であろう。
「うわっちぃーーっ! もう間に合わぁーーん!」
孝治再び悲鳴。これで何度目となるであろうか。
それはとにかく、見れば洞窟のひび割れが、崖全体にビシビシと拡散していた。これはワイバーンの底力の凄まじさを、露骨に見せつける実証でもあった。
その間にもガラガラガラガラグアラガアアアンンンッと、崖全体を揺るがす勢いで、ワイバーンが洞窟から抜け出ようともがいていた。
しかもこの場で、高い咆哮。
グアガアアアアアアアアアアアアアッ!
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