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『剣遊記Y』

第五章 巌流島の決闘。

     (7)

 このような衛兵隊長の胸の内はともかくとして、沙織は居並ぶ重鎮たちの中では、特に異彩を放つ存在となっていた。なぜなら強面ばかりの男性陣が踏ん反り返る中、女性は沙織ただひとり。しかも、まだ年端もいかない女子大生が――なのだから。

 

 だが、この試合の真の主催者が沙織である話は、大門以外の誰もが知っている事実でもあった。だから考えようによっては大門は、とんだピエロ役になってしまうかもしれない。

 

 沙織は試合決定のすぐ翌日から、大量の広告を秘密裏に作成。泰子と浩子の力も借りて、近隣の市町村に大掛かりな配布を行なった。勝利者がどちらなのかを選択する、賭けへの案内状も書き添えて。

 

 反響はすぐに広まり、沢見と沖台を宣伝隊長にしての問い合わせと応募が殺到。それも圧倒的大多数が、板堰の勝利を予測した。

 

(ここまでは計算どおりなんだけどぉ……このまま荒生田さんが来なかったら……単純に考えて板堰先生の不戦勝なんだけどぉ……そうなったら未来亭の利益がちょっと少なくなっちゃうのよねぇ〜〜☻☻)

 

 今のままでは、確実に板堰の勝利は確定的。しかし現実問題として、これでは賭けにならないのだ。そのため沙織は、ある秘策をすでに考えていた。もっともその秘策でさえも、当のサングラス😎戦士が登場しなければ、すべてがおじゃんとなるのだが。


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