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『剣遊記Y』

第五章 巌流島の決闘。

     (14)

 巌流島に近づこうとしている一隻の白い色をした小型木製ボートは、今や島にいる一同全員の注目を集めていた。従って当然、孝治たちのうしろのテントからも、『やっと来よったばい☞』の声が上がっていた。

 

 そのテントの中にいる面々の内、一番先にボートに乗っている人物がわかった者は、やはり沙織であった。

 

「やっと……ですけど、荒生田さんがお見えになったようですわ☀」

 

「そ、そうかぁ……ようやく来おったかぁ!」

 

 沙織の確信を得た格好で、左隣りに座っている大門も、その表情に安堵の色を浮かべていた。

 

 とにかく荒生田が約束を破らずに現われたおかげで、一応おのれの面目が立ったわけでもあるのだから。


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