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『剣遊記Y』

第五章 巌流島{がんりゅうじま}の決闘。

     (1)

 剣豪板堰と戦士荒生田。両者の運命の出会いから、早くも二日が経過した。

 

 この世紀の決戦をあすに迎え、北九州の街は沙織のもくろみどおり、二大戦士一騎打ちの話題で、大いに盛り上がっていた。さらにその盛り上がりの原動力が、沢見、沖台のふたり組による、どちらが勝つかを予想する賭け事勝負だった。

 

 だからきょうもきょうとて繁華街の片隅で、沢見の口上が威勢良く響くわけ。

 

「さっ、どないや! 日本全国にその名も高い剣豪板堰守と、悪たれ戦士荒生田和志による史上最大の大決戦や! さあ、どちらが勝つか負けはるか! ここは大いに予想して、じゃんじゃん張ってやあ!」

 

「おれは板堰に金貨十枚やぁ!」

 

「俺かて板堰に金貨二十枚賭けるけねぇ!」

 

 大方の予測どおり、断然的に板堰優勢の予想ばかり。これも板堰守の名が全国的に知られているのに対し、荒生田和志など地元北九州市でも、無名以下の凡人と言えるからであろう。

 

 まあこれも、無理からぬ話ではあるけれど。


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