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『剣遊記 番外編Y』

第三章 美女が液体人間。

     (9)

「おい! なんか、ずいぶんやおないこつ、言うてくれるっちゃねぇ♨ 風に聞いた話じゃ、最近髪ん色ば緑に染めたっち言いよったっちゃが、ほんなこつ緑にしとうっちゃねぇ☻ いったいどげな心境の変化ね☛」

 

 律子の悪意がこもっている説明で、どうやら腹を立てたらしい。最初に現われて、今も先頭に立っている男――炉箆裸とやらが、手持ちである角燈{ランタン}の光を、直接律子の顔に当ててくれた。

 

 ちなみにこの男、律子の緑髪をとやかく言っておきながら、自分自身は赤い髪に染めていたりもする。

 

 とにかくこれにて、今度は律子立腹の番となったわけ。

 

「わたしん髪の色なんち、それこそわたしの自由ばい!」 

 

 そのついで、どうでも良いことも思い出す。

 

(そげん言うたら、こいつにはわたしん髪んこつとか薔薇んこつ、いっぺんも言うたことなかったばいねぇ✄ まあ別に付き合いもなかったとやけ、当たり前っちゅうたら当たり前なんやけどね☻)

 

 無論その件はすぐに棚に上げ、律子は言葉を続けてやった。

 

「人んことばよう言えんくせしてからにぃ♨ それに聞こえるように言うたこつ、初めっから全部あんたに聞かせるつもりやったんやけね♨☛ こん赤髪野郎っ☀」

 

「あんねぇ、俺ん立場も考えちゃってや☹」

 

 赤髪野郎の背後で、連れの者たちがくすくすと失笑していた。そのためか、炉箆裸は見事に顔面真っ赤の、頭の髪と同じ状態。いわゆるニンジン顔と言うべきか。

 

 とにかく思いっきりの逆恨みが明白なのだが、炉箆裸が律子に、さらなる憤怒の目を向けた。

 

 だが律子とて、ハナッから炉箆裸を挑発してやる気満々になっていた。従って怯む姿勢など、わずかたりとも見せてはやらなかった。

 

「こげなとこでいっちゃん見とうなか顔ば見るなんち、わたしかていっちょも思わんかったばい☠ それよか今は、わたしらが新人教育ばしよう大事な時間なんやけ、あんたらこそとっととこっから出ていきや☢☛」

 

「先輩……それっちいじくそ無茶過ぎばってん……☁」

 

 秋恵が律子のうしろから、冷や汗😅たらたら丸出しの感じでささやいた。だけどももはや、律子は自分の暴走を止める気はなし。とにかく気に入らない相手には絶対に引き下がらないところが、女猛者の面目躍如たる場面なのだ。


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