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『剣遊記 番外編Y』

第三章 美女が液体人間。

     (10)

「へへっ☻ 炉箆裸の兄貴もやっぱ、九州の女にゃ弱い九州の男っちゅうとこやろっかねぇ☻」

 

 ついに自分の連れのひとりから声に出して笑われ、こちらは律子とは逆で、炉箆裸は大いに面目失墜の場面となっていた。

 

「しゃ、しゃーーしぃーーったい♨」

 

 炉箆裸が自分の味方相手に怒鳴り散らした。続いて別の連れの男が、律子たちを前にして、なにやら危ない話をささやき出した。

 

「まっ、おめえとこん女とどげな因縁があったかは知らんちゃが、こんまんまで済ますわけには、やっぱ行かんちゃろうねぇ☠☻」

 

「そ、そうっちゃね☹」

 

 炉箆裸もこれには、異論がない感じ。再び律子たちに目線を戻した。おまけに口元が、なんだかいやらしい感じでゆがんでいたりして。

 

「そうっちゃ★ たとえ俺の昔の知り合いっちゅうたかて、ここに俺たちがおるっちゅうことば知られた以上、『はい、さよなら✋』で終わらすわけにはいかんばい✄ ここはまあ、運がようなかったっち思うてあきらめるんやな☠」

 

「な、なんねぇ……そん超勝手でなんの説明も脈絡性もなか言い草はぁ……☁」

 

 炉箆裸からにらまれた律子の背中に、なにか冷たい感触が駆け降りた。

 

「あ、あんたら……昔っから碌に真面目に働きもせんと、ワルさばっかししよったばってん……ついに越えてはいけんハードルば越えてしもうたとね☢?」

 

「そうっちゃよ☻」

 

 しだいに血の気が引いていく思いの律子とは対照的。炉箆裸のほうは、真っ赤だった顔をだんだんと落ち着かせ、今や逆に余裕の態度となっていた。

 

「俺は盗賊になりゃ金儲けがしたい放題っち思うたけ、こん道ば選んだんばい☹ それがいざなってみりゃどげんね✄ ただ遺跡の穴ポコば掘るばっかしで、いっちょも金なんてならんとやけ⚠ で、ここにおる古美術屋さんたちと知り合{お}うて、掘り出したモンば自分で売ったほうが儲かるっち教えてもろうたっちゃよ♐」

 

「なんね、今問題になっとう裏での発掘品売買やない⛑⛔」

 

「先輩、そがんいじきたな話、知っとうとですけ?」

 

「当たり前ばい♐」

 

 このとき背中に隠れていたのだが、うしろから尋ねる秋恵に、律子は人生の先輩顔になって答えてやった。

 

「こいつらが言いよんのはほんとにありようことで、勝手にいろんな遺跡ば掘り荒らして、出てきた宝モンばちゃんとした鑑定ば通さんで、勝手に海外なんかに売り飛ばしよんばい☢ やけんそげなこつしたら、ふつうの価格の倍以上の稼ぎがあるらしいそうやけね☠」

 

「ソレジャ、ボクタチモソウスルンダナ、ワレェヤンケ」

 

「あんたは黙っとき!」

 

 ここでよけいな口をはさんだ徹哉(こいつも今まで黙っていた)を蹴り飛ばし、律子は改めて炉箆裸たちに、怒りの瞳を向けてやった。

 

「確かにそげな悪どいこつ、昔っから陰険やったあんたならやりそうなことばいねぇ☠ それによう見たら冬父可{とぶか}に基鰤{きぶり}もおるやない☚☛ それ以外は知らん顔ばっかやけどね☋☊」


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