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『剣遊記 番外編Y』

第三章 美女が液体人間。

     (17)

 これでとうとう、本当の本気となったようだ。十人――いやいや十匹の野獣どもが、口から涎をダラダラと垂らしながらであった。全員が一斉に、律子と秋恵の服を無理矢理脱がしにかかった――は、まだまだ生ぬるい表現法。今や破り捨てている有様となっていた。

 

 ビリビリビリッ バリバリバリッ――と。

 

「こん馬鹿ちぃーーん! やめんしゃーーい!」

 

「きゃあーーっ! いんやーぎんやめちゃってぇーーっ!」

 

 この期に及んでも、律子の気丈ぶりは健在。しかし秋恵は、そこまで行かなかった。

 

「あ〜〜ん☂ おかしゃまぁ〜〜っ☃」

 

 男どもの汚れた手が、容赦なく秋恵の衣服をはぎ取り、やわららかそうなほっそりとした桃色の肌が、すでにあらわとなっていた。

 

「ほんなこつやめんねぇ! そげなこつしたら、こんわたしがずえったいに許さんとやけぇ!」

 

 修羅の光景に、律子は声を荒げて怒声を張り上げた。それでも男どもは、とっくに聞く耳持たず。ここは手強そうな律子を後回しにして、まずは見た目にか弱そうな秋恵のほうからご賞味――と言ったところなのだろう。そのためなのか、律子を力づくで抑える係をしている四人の男どもはうらやまし気分丸出しの、つまらない愚痴をつぶやいていた。

 

「よかねぇ〜〜☹ オレかてあっちん若いほうば捕まえるんやったっちゃねぇ〜〜⛅」

 

「あっちん若いほうってなんねぇ!♨♨」

 

 これには律子もカチンときた。

 

「悪かったばいねぇ! 年齢がいっちょ上んほうでくさぁ♨ なんち言いよう場合やなかばい! とにかく秋恵ちゃんから離れちゃりやぁ!」

 

 あとでよくよく考えてみたら、思いっきりに筋違い。それは今は棚に上げ、律子は再び、緑の髪を天井に向けて逆立て直した(?)。なんと言っても現在緑色の瞳の前で行なわれている後輩の貞操の危機で、もはや天地が引っ繰り返らんばかりの精神状態に陥っている心境なのだ。

 

 いずれにしても、杭巣派たちの鬼畜極まる振る舞い。野獣の本性剥き出しの彼らであった。


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