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『剣遊記 番外編Y』

第三章 美女が液体人間。

     (16)

 やがて、おのれの邪念を実行に移す頃合いとなったらしい。炉箆裸が自分のボスであるチョビ髭中年に声をかけた。顔面にニヘラ笑いを丸出しとして。

 

「じゃあ杭巣派{くいすぱ}の旦那、こいつら表まで引っ張り出して、そこで裸にひん剥いちゃいましょうや☻」

 

「おう、そうっちゃね☆」

 

 『くいすぱ』と言う名が、ボスの本名であるようだ。けれど、名前など本当にどうでも良し。それよりも律子は、逆転のチャンス到来を、声には出さないようにして喜んだ。

 

(やったばい! これで太陽の下に出られたら、一気にわたしん勝ちったいね⚽✌)

 

 しかし話の展開は、そんなに甘い成り行きではなかった。配下の冬父可と基鰤が、よけいな妄言を吐いてくれたのだ。

 

「そやかて旦那ぁ、おれたちゃもう辛抱たまりまへんのやけどぉ✊」

 

「そうっちゃ♐ もうこん場でやっちゃいましょうばい⚐⚑」

 

「そうっちゃなぁ……まあ、どこでやったかておんなじやしな⛐」

 

 杭巣派が簡単に、前言を撤回してくれた。

 

「ちょ、ちょっとぉ!」

 

 律子はこれに、猛然と文句を言い立てた。

 

「あんたらも男やったら、初めに決めたこつ実行せないけんとばい! そこの親分さん☝ あんたっちゅう人は、いつもかつも他人の言動に左右されるっちゅう人なんねぇ!」

 

「な、ぬわにぃーーっ!」

 

 だがやはり、この状況下における異議申し立ては、明らかに逆効果の事態にしかならなかった。

 

「さっきからこん女、いっちょも口ん数が減らんやなかねぇ! もう面倒やけ、ほんなこつここでいてこましたるんやぁーーっ!」

 

「へいっ!」


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