『剣遊記 番外編Y』 第三章 美女が液体人間。 (12) 「さすがは律子っちゃねぇ☻ ガキんころからそん鼻っぱしん強さは、いっちょも変わっちょらんばい☛」
「炉箆裸こそ、か弱い女性に寄ってタカって襲いかかるんやけ☢☠ そん陰険な性格こそ、いっちょも変わっとらんやなかね☠」
「しゃ、しゃーーしぃーーったい!」
「ひゃははははっ☺」
「何べんもからかわれてやがるぜぇ☺」
炉箆裸の売り言葉に対する律子の買い言葉も、これはこれで図星であったのだろう。再び仲間たちからの失笑を浴び、顔色が真っ赤な状態へ逆戻りとなった。しかしこれで形勢逆転とは、律子自身もまったく考えられない現在の有様でもあった。
(……こげな地下やのうて太陽が照っとう地上やったら、わたしの薔薇ん力でこげな連中、イチコロにできるとにぃ! これじゃ光合成のパワーも発揮できんばい☠☢ でもこいつら、ほんなこつわたしんことば、よう知っとらんみたいばい? みんなけっこう知っとうはずばってん、こいつらなんの情報も来とらんとやったんね?)
ここで律子は、ハッと気がついた。たぶん――ではあるが、恐らく炉箆裸とその仲間たちは、旧知の女盗賊が現在ワーローズとなっている話など、本当になにも知らないようなのだ。なにしろ律子の髪の色(緑)を見ても、単なる染色と言っているくらいであるから。
あるいは自分たちの仲間以外、ひとりもお友達がいないのだろうか。
しかしだからこそ、その分律子は有利とも言えるはず。理由はなにも知らない相手への、サプライズ的奇襲が可能となるからだ。
だがそれもあくまで、昼間の太陽の下での話。光源と言えばロウソクや角燈の灯りしか存在しない地下の空間では、律子はまったくふつうの人。それを『知らぬが仏』と言うべきなのか、炉箆裸が大きな声を張り上げた。
「よかやぁ! 全員で抑えるったぁーーい!」
「きゃあーーっ!」
しょせんは多勢に無勢。ついに律子は、男どもによって捕われの身となった。四人の野獣たちから、両手両足を雁字絡めに握られた格好で。 (C)2015 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |