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『剣遊記番外編Y』

第一章  女盗賊への弟子入り志願。

     (5)

「さて、お嬢さん方ぁ☻」

 

 律子たちふたりを完全孤立無援としたところで、最初の勧誘男がなぜか勝ち誇っている感じになって、余裕の態度丸出し。ふたりにニヘラ顔で迫ってきた。

 

「で、早速なんだけど、住所と名前教えてくれない☻☎」

 

 先ほどからの馴れ馴れしさも健在。しかしここでは、セリフの節々になんだか、危なそうな要素を改めて含めていた。その部分が新しい変化と言っても、決して差し支えはなさそうだ。

 

 つまり――言うとおりにせんと、無事には帰さんからな☠――の色がありあり。

 

(やっぱ、こげな話の展開ばいねぇ〜〜☢)

 

 この事態に、なかば予測のついていた律子は、無言でうなずいてやった。相手のやり方が、かなりに定番どおりであるがゆえに。だけど秋恵のほうは、もう完全なるパニック――というよりも、錯乱に近い状態にまでなっていた。

 

「あたし嫌ばってん! 香港は将来観光で行くようしとったとやけど、誘拐で売られるのはごつか嫌っ! 行くとやったらせめて、こん街での援助交際くらいにぞーたんのごとしちゃってやぁ!」

 

「は、はぁ……♋」

 

「ほ、香港って……なに言ってんの?」

 

 これには男どものほうが、見事に目が点の状態。

 

「……しょんなかばいねぇ……☢」

 

 ここまで事態が悪化の一途をたどれば、律子もあるひとつの決断を下さなければいけない感じ。意を決して、男たちの前に、一歩二歩と歩み出た。

 

「ちょいあんたらぁ!」


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