『剣遊記 番外編Y』 第一章 女盗賊への弟子入り志願。 (2) だが、知っている者はよく知っているとおり、律子の怖いもの知らずな性分は、それこそ有名過ぎる事実でもあった。しかも一応ここでは年配者なので、強気な姿勢で勧誘男に臨まないといけないだろう。
とは言っても、叩いたり蹴ったりではない。男に聞こえないよう細心の注意を払いながら、連れの女の子に向けて、この場ではそっとささやくだけ。
「大丈夫やけん✌ 大方巷{ちまた}で流行っとう新興シューキョーみたいなもんばいねぇ⚠ ここ博多県でも最近よう増えてきたっち、近頃ニュースで聞いたんばい☻☻」
しかし律子のある意味能天気なセリフで、逆に女の子の不安感が増幅された模様。
「で、でも、そ、それやったら、いじくそおとろしかやなかですか?」
それでも先輩(女の子がそう言ってくれている)の立場としての、律子の強気は変わらない。
「よかよか☆ こげんときはひと言、こげん言うてやりゃあよかと✌」
女の子に言葉を返して、律子はわざとらしく口の右端に、微かな笑みを浮かべてやった。それからなんとか協会とやらの男に向かって、ひと言ズバリ。
「わたしたち、興味なかけん✋」
これでもふだんからの跳ねっかえり気質で有名な律子にしてみれば、充分以上で穏便に片付けてやったつもり。もちろん勧誘男のほうも、これで簡単に引き下がるはずもなし。
「君たちねぇ、大人をあんまりからかうもんじゃないよ☹」
街角に立つ勧誘員にしては、意外と気が短いようでもあった。律子のこれまたある意味慇懃無礼な返答の仕方で、多少のムカつきを覚えたようだ。
そのせいもあるのだろうか。急に大きな声を張り上げ、周囲に向かって呼び掛けた。
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