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『剣遊記 番外編Y』

第一章  女盗賊への弟子入り志願。

     (19)

 黒崎自慢である有能秘書がいない間にも、ふたりの会話は弾んでいた。ちなみに『ふたり』と表現した理由は、若い男性が、ひと言もしゃべろうとしなかったからだ。

 

「積もる話はたくさんあるんだけど、とにかく向こうの世界はどうだがね? 今でも科学の競争は激しいのかな、日明博士?」

 

 若い男性はさておいて、黒崎がいかにも親しげに、話を進行させた。すると黒マントの変人――いやいや博士こと日明春城{ひあがり はるき}氏は、大笑いの繰り返しばかり。

 

「ぬわっははははははっ☆☆☆ まあそんなええころかげんな話は、ここにおますとろい徹哉クンに、どうぞこうぞで答えてもらうだがやぁ☀☆ なあ徹哉クン、黒崎クンにいらんこと言わんでかわす教えてやるんだがねぇ☆♡♤」

 

「ハイ、博士」

 

 ここで初めて、日明の左側に座っている若い青年――夜越徹哉{よごえ てつや}が、代理指名で黒崎に応じた。

 

「ハイ、相変ワラズナンダケド、毎日資本ノ論理ニ惑ワサレテ人々ハ日夜、株トカ配当ノ慌タダシイ情報ノ流レニ振リ回サレテンダナ。ボクハ以前ニ拝見シタンダケド、コノユッタリトシタ世界ノホウガ、人間ガスコヤカニ生キラレル状態ニ、完全ニ合致シテルト判断シタインダナ。ソレデ博士ニオ願イシテ、コウシテ再ビ、コノ世界ニ派遣ヲサセテモラッタンダナ。ソレト博士ハヤッパリ、兵隊サンノ位{くらい}デ言ッタラ大将サンナノカナ。トニカク二度目ノ調査観察ナンダケド、ドウカヨロシクオ願イシタインダナ。ツイデニおむすびモモラエタラウレシインダケドナ」


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