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『剣遊記 番外編Y』

第一章  女盗賊への弟子入り志願。

     (10)

「まあ、そげん言うて誉めてくれるのはうれしかばいねぇ♡ とにかくこれぞ、薔薇少女の面目躍如ってとこやけねぇ☆ それにあなたかて、わたしと違う特技ば持っとうとでしょ☞☝ それなんにわたしばっか力ば使わせて、これってこすかばいってもんやけね☻」

 

「は、はい……それはすんましぇん☂」

 

 先輩からの軽いお叱りの言葉を受け、秋恵がすなおな態度で、頭をペコリと下げた。だからと言って、本心から反省をしているわけでもなさそうだ。

 

「そうばってぇ〜〜ん、きょうの場合、先輩の出番が先になってしもうてぇ、あたしの活躍がのうなっただけのことやっち、思いますばい☁ そがんやけあたし、いきなりんことできゃーまぐれてしもうたとですけどぉ……♋」

 

 半分言い訳がましい部分はわかっていた。でも、それを耳に入れた当の律子は、ふふんとくちびる💋の右端に、不敵気分の笑みを浮かべるだけにしてやった。

 

「まあ、よかよ☻ それよかとにかく、こげなとこから、早よ行ってしまうに限るんばい☛」

 

 それからすぐに、秋恵といっしょ。裏通りの路地をあとにした。

 

 いまだに気絶しているままの男どもが、このあといったいどうなるのか。多少は気にかかる成り行きではあった。

 

 まあたぶん、これからあちこちで薔薇の花を見かけるたびに、きょうの恐怖体験を思い出す、一種のトラウマに囚われ続ける話となるだろうか。

 

 彼らが実際、どう言った団体(どうもシューキョーとは関係なさそうだし)に所属して、またどのようなインチキ勧誘を今までやらかし続けてきたのか。これはもう、律子には知りようのない話なのだし、それに興味もない。

 

 それはとにかくとして、『いい気味ったい☻』と、声をかけてやりたい気分だけは、ほぼ確実に間違いはないだろう。


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