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『剣遊記番外編U』

第二章 伝説の魔剣って、あ・た・し♡

     (7)

 あまりにも予想のとおりだった。三人が手ぶらで、洞窟の奥から戻ってきた。

 

(こいつら……なーんも変わっとらん……☠)

 

 板堰はむしろ失望の思いで、何度目かのため息を吐いた。

 

 そんな彼らではあったが、外に出て板堰と顔を合わせ直すなり、思いっきりに居直ってくれた。

 

「けっ! あげなーインチキもええとこじゃったぜぇ! だいたい岩にめり込んだ剣が抜けるわけなかろうが!」

 

 これでは、どこからどのように見ても、ただの負け犬の遠吠え。その遠吠えしている麻司岩に、当然ながら同類の脛駆も同調していた。

 

「ったくそんとおりじゃけー! よく出来とう観光のために見せモンじゃよ!」

 

 見るのも聞くのも情けない定番をふたりが吠える中、魔術師だけはひとり、ずっと無言を貫いていた。

 

 このような三人がそろう前、板堰は魔術師と先ほど会話を交わしたのだが、そのときの感じからすると、彼は同伴の戦士ふたりを見下しているような感があった。

 

 いったい麻司岩と脛駆とは、どげーな関係にあるのんじゃろうかのぉ――板堰は魔術師の態度に、なんとなく的な疑問を抱いた。その最中だった。

 

「おらぁ! 次のやつ、さっさと来んかい!」

 

 相変わらずの偉そうぶった役人の呼び声がしても、考えに熱中していた板堰は、すぐに返事ができなかった。

 

「板堰殿、私たちの出番ですぞ!」

 

「あ、ああ……☁」

 

 二島に声をかけられて、ようやく我に返るほど。半分慌てた感じで、板堰は洞窟内に足を踏み入れた。

 

「では、よろしゅうお願いいたしまっせ♡」

 

「…………☠」

 

 二島は入り口の役人に丁寧な挨拶をしたのだが、やはりまったくのノーリアクション。毎日大勢の挑戦者たちに同じ応対を繰り返しているのだから、自然とこのようなかたちになってしまうのだろう。だがやはり、あまり感じの良いものではない。

 

 もっとも二島も板堰も、そんな些細なことなど、気にもしなかった。とにかくふたりで、洞窟の奥へと足を進めるばかり。これは両者の意外な共通点かもしれないが、どうやらふたりとも、世間の荒波も揉まれた経験が、けっこう深い。だからこの程度の人種には、すっかり慣れっことなっているようなのだ。

 

 ただしそのような自覚など、ふたりとも(板堰と二島)そろって持ち合わせてはいないのだが。


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