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『剣遊記番外編U』

第二章 伝説の魔剣って、あ・た・し♡

     (19)

 そんな二島を前にしても、千恵利は裸のまま。堂々とした口調で話を続けた。

 

「そやねんな☀ あたしの仲間とやらは、まだまだこの日本のあちこちにおるって聞いたことあるわ☝ ただ今となっては、あたしもどこにおるんか、考えるのやんぺにしたいほど全然わからへんのやけどな☢ ついでに言えば、このあたしがこないな風に西洋人スタイルでおるんも、その創造主はんとやらの趣味の産物やねん☻」

 

 これに二島が賛同の相槌。

 

「そりゃ納得できますわ☆ 昔っから我々日本人は、西洋へのでらい憧れを抱き続けておりましたからなぁ♡」

 

「おい! 千恵利ぃ!」

 

 一応の話が済んだらしいところで、背中を向けている板堰は、千恵利向けに怒鳴り声を上げた。

 

「はい、なぁに♡」

 

 にも関わらず、千恵利の無邪気丸出しな返事。板堰はなんだか、振り上げた拳の下ろし場所に困るような思いとなった。

 

「身の上話が済んで気も済んだようやけぇ、早ようべべ着てくれんかのぉ☠ こんまんまじゃおちおち話もできんけー☠」

 

「きゃっ♡ まもる君ったら、かーわいい♡」

 

「まあ、確かにそうでんなぁ☺」

 

 千恵利はとにかく、二島は板堰に同感してくれた。エルフの吟遊詩人もまだ、両方のまぶたを閉じたままで、千恵利に忠告を行なった。

 

「まあ、説教ぶる気もないんでおますんやけど、これは板堰殿がおっしゃられるとおりでございますぞ☻ 仮にもあなた様の前に存在している者はふたりそろって男性陣なのでございますから、ちょっとは気を配っていただきたいもんでんなぁ♪♫♬」

 

 ところがこの金髪娘ときたら、ふたりの殿方(板堰と二島)を、明らかに堂々とからかってくれていた。

 

「ややもんね♡ あたし今でらい気分ええさかい、ちょっとこんまんまで山ん中散歩してくるわ♡ 夕御飯までは帰ってくるさかい、そんなに心配せえへんでもええで♡」

 

 それから千恵利は本当に、全裸のままで山の奥へと駆け出した。

 

 やはり彼女は人の規範には当てはまらない、魔神――ジニーの娘なのであろう。

 

 特に性格の面において。

 

 けっきょく二島は、早くも千恵利に白旗を揚げた格好。

 

「これは私どもの負けのようでんなぁ☻ まあ千恵利はんが裸に飽いて、ご自分から服を着られるようになりはるまで、我々は極力目を開けないようにいたしますかな♡」

 

 しかし板堰は、二島の言葉に、頭を横に振る態度で応えてやった。

 

「わしゃあ……自力で目を閉じとく自信が、これ以上ないけんのぉ……じゃから目隠しをさせてもらうけのー……♋」

 

 板堰は鎧の懐から白いハンカチを取り出し、それを頭のうしろで結んで、本当に自分の両目を隠すようにした。


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