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『剣遊記番外編U』

第二章 伝説の魔剣って、あ・た・し♡

     (15)

 いつの間にやら、明日香の村から外部に出る街道をひたすら真剣に走っている板堰と二島の前方に、例の元先輩と連れの魔術師の三人組がいた。

 

 彼らは剣を手に入れることができなかった腹いせに、通りがかりの旅人(若い男女カップル)に言いがかりをつけ、路銀をカツアゲしようとしている最中でいた。

 

「どいてやぁーーっ!」

 

「邪魔じゃあーーっ!」

 

 そこへドガァァァァァァンンッと、勢いが止まらない二島と板堰によって、訳もわからず跳ね飛ばされた。

 

「わひぇーーっ!」

 

「ぎゃあーーっ!」

 

 三人の内のふたり。麻司岩と脛駆が道路脇の小川まですっ転び、この隙にカツアゲ被害者のカップルが、無事に逃走。また、これの巻き添えにならなかった者は、カツアゲを傍観していた魔術師の男だけであった。

 

 その魔術師がつぶやいた。

 

「あんやつ……ほんまにやりよったわ♥」

 

 板堰の右手に洞窟内で岩に突き刺さっていたはずの魔剣が握られているのを、彼はしっかりと見逃さなかったのだ。

 

 そんな魔術師の背後では、びしょびしょの戦士ふたりが体全体から水をこぼしつつ、道路の上によろよろとした足取りで這い上がっていた。

 

 魔術師はこのふたりに、なんの手助けもしようとはしなかった。それよりも、一生懸命に走っている板堰と二島の後ろ姿を見据え、ニヤリと不敵そうな笑みを浮かべるだけでいた。

 

「これでわいも、事が運びやすうなったっちゅうもんやな♡ あとはいかにして策を練るか……っちゅうことや☠」


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