『剣遊記Y』 第二章 伝説の剣豪。 (5) このとき例によって、空から一部始終を見ていた者がいた。無論のごとく、幽霊の涼子。
『あ〜あ、せっかく店長に謎の従妹がおったっちゅうて、孝治ば驚かせようっち思いよったとにぃ☁ これじゃ今それば言うたって、驚き度がいっちょん弱くなっちゃうだけっちゃねぇ〜〜☹』
いつの間にか、従妹に『謎』の枕詞{まくらことば}が勝手にくっ付いている言葉づかいは、この際棚上げ。それよりはどのように見ても考えても、一般人である店長の従妹より有名人との遭遇のほうが、受ける衝撃が断然に強力である。
それくらいの空気など、涼子は簡単に見抜けるのだ。
『あたしも行ってみよっと☞』
けっきょく涼子もそちらのほうに興味が惹かれ、こっそりと空の上から孝治たちを追跡――という事の顛末。 (C)2012 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |