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『剣遊記 邂逅編T』

第一章  出逢い……そして永遠に。

     (6)

 そんなときやった☀

 

「ちょっとぉ! そこんとこ道ば開けんしゃいよぉ!」

 

「うわっち! だ、誰かおったと!?」

 

 他人の視線が無いのをええことに、ひとりでカッコばつけとったおれの耳にやねぇ、急に女ん子らしか怒りに満ちた声が飛び込んだと♋ やけどそん声は全然違う方向から聞こえてきたけ、どうやらおれとは無関係のようやった⛐ まあ、ひとりでいい気になっちょったおれとしては、変なところば見られんで幸いやったっちゃけどね☻☺

 

 それでも声の様子からして、只事ではない感じやったっちゃ⚠ 大方山道に迷うた女ん子が、よくある無粋な連中から、言い掛かりでもつけられたんやろうねぇ☠

 

「まっ、助けてやるっちゃね☀」

 

 それなりに剣の修行ば積んだおれにとって、チンピラのひとりやふたり、特に恐れる理由なんち、なんにもなかったけ☻ だいいちそげな手の連中は、碌な訓練も積まんと錆びた刃物ば振り回すしか能のない馬鹿ばっかしなんやけ☠ やきー、こちらが本腰ば入れてビビらせちまえば、たちまちしっぽば振って逃げるっちゅうもんと、世間の相場が決まっとんやけ♐

 

 とにかくおれは、とことん相手ば舐めた気分やった。そんな調子で、女ん子が絡まれとうらしい現場へと急行したと✈ で、現場に着く前に藪ん間から様子ば伺{うかが}って見たったい⚆⚈

 

「黄金のパターンっちゃねぇ♐」

 

 現場では身なりの汚らしい野郎が三人――組み合わせは人間ふたりとコボルト{犬頭人}がひとり。確かに女ん子ばひとりを取り囲み、脅しばかけちょう真っ最中やった☢

 

 その女ん子っちゅうのが、短めの髪に服装はおれとおんなじような、戦士の軽装鎧なんかを着ちょったと⚢ やけんそれから察するに、まあ駆け出しの女戦士{アマゾン}っちゅうところやろっか✍

 

「へへぃ♥ 可愛らしいお嬢ちゃん♥ こげな山ん中ばひとりで散歩なんち、危険でしょうがなかばぁ〜〜い☠」

 

「げひひっ☠ なんやったらオレたちが安全な場所まで御案内してやるったいねぇ♥♥」

 

「そうそう♥ 安全ついでにおもしろかとこにもねぇ♥」

 

 馬鹿者三人の、ワンパターンでオリジナリティ性皆無。とにかく下品丸出しな戯言{たわごと}なんち、ほんなこつどげんでもよかったたい(これとおんなじセリフば、おれ自身が後年何回も聞かされる破目になるとやけ☠)。

 

 やけどそげな馬鹿チンどもよりも大いに感心したんは、脅されちょう女ん子の、意外なほどの気丈ぶりやった♋

 

「なんね! 嘘言うてもわかるっちゃけね! どうせもっと山ん奥まで連れ込んで、もっと意地ん悪かこつするとでしょ!」

 

 野獣みたいな三人の野郎ば前にして、でたん強気な女ん子やねぇ♡ その辺の状況は棚に上げて、おれはここで、威勢良く雄叫びば上げてやったと☎

 

「おうおうおう! 誰も見ちょらん山ん中っちゅうて、おめえらちいとばかし調子に乗り過ぎちょらんねぇ!」

 

 もちろん新品の剣はとっくに構えちょうし、こちらの戦闘体勢は充分たい✌ セリフが少々臭かぁ〜〜っちゅうのは、あえて突っ込まんでほしか―ーっちゅうところやね☻ そげんことよりおれの啖呵に気づいてくれた三人が、雁首そろえてこっちに向いてくれたったい✊

 

「あんだぁ?」

 

 これはなんかなしやけど、実に気分が良かったっちゃね♡ でも、ちょっとビックリな事態♋

 

「やったぁ♡ どこのどなたか知らんとですけど、わたしば助けに来てくれたとですねぇ☀☆」

 

 カッコよう救援に入ったつもりのこんおれに、当の女ん子がチンピラどもの間を抜けて、いきなりヒシッと抱きついてきたと!

 

 おれと女ん子の間はチンピラどもがしっかりガードしちょって、それでも連中ば押しのけてこっちまで来るなんち、ふつうは不可能な行動ばい⛔ それなんに女ん子は連中をどかしたわけでもなく、むしろ壁ばすり抜けるみたいに、まっすぐおれんとこまで来たっちゅうこと✄

 

 つまりこれは、魔術における近距離の瞬間移動ってわけ✍ やけんおれはつい、素っ頓狂な声ば出してしもうたと☆

 

「うわっち! 君って魔術師やったんやねぇ☆」


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