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『剣遊記 邂逅編T』

第一章  出逢い……そして永遠に。

     (2)

「…………」

 

 刀剣屋の親父は、ほんなこつ無粋なおっさんやったたい。

 

 おれば単なる冷やかし客と思うたんか、それとも若輩ごときが小生意気に剣なんか買うんやなか――とでも、思っとんやろっか♨ せっかく客として来てやったっちゅうとに、さっきからひと言も、おれと口ば聞こうとせんのやけねぇ☠

 

 まあ、よかっちゃ☺ おれはおれで、勝手に店ん中ば見させてもらうけん♥ かえってあれこれ世話ば焼かれるよか、よっぽど気が楽ってもんやけ♠

 

 そやけどしゃべる相手がおらんとなると、口からこぼれるおれの言葉は、やっぱ意味ばなさんつぶやきばっかになるっちゃねぇ☠ それがわかっちょっても、やっぱし意味んなかつぶやきばこぼしてしまうもんやけ、我ながら困ったもんたい☹

 

「えぇ……っとぉ……☁」

 

 それはとにかく、今のおれん目の前には、いろんな短剣やら長剣、斧っとか槍、盾なんかがズラリと棚に並んじょうと✍ やけん、こんだけの品揃えがあるとやけ、ここで目移りついでに地声が漏れたかて、別におかしゅうなかろうも☜☞

 

 ちょっと言い訳がましいとは、自分でもわかっとうとやけどね☻

 

 そやかて、誰がなんち言いよろうが、戦士としての晴れの門出には、自前の剣は絶対の絶対に必需品なんやけ☻ それば持たんでから、なしておれが戦士なんち名乗ることができるっちゅうとや?

 

「だいたい、師範がおれに剣の暖簾{のれん}分けばしてくれたら、おれがこげな苦労ばせんでもよかったんやけねぇ……ったく、最後の最後までケチってからにぃ……☠」

 

 またつまらん愚痴が出よったばい☁

 

 確かにおれ自身、満点の成績で師範の元から(脱走同然で)独り立ちしたわけやなかやし、それくらいの自分が自覚できんような、身の程知らずでもなか――つもりなんやけ♐

 

 ただ、おれよか少々腕が立つとはいえ、先輩の戦士たちが先に独り立ちしたとき、師範から直接剣ば授かっちょうのば見たら、一本ももらえんかったおれは、いったいなんやったんやろっか――っちゅう風に考えてしまうと♠

 

 まあそれでも、独り立ちは独り立ち。師範がくれんのやったら、自分で勝手に手に入れるだけやけ☢ そげん風に考えて、この街でけっこう大きい刀剣専門店の敷居ば跨いだわけなんやけど、これが見事な大外れやったっちゃねぇ☠

 

「うわっち……安モンばっか……☠」

 

 今の嫌味混じりのつぶやきは、店の親父には聞こえんようにした、小声のつもり☢

 

 この刀剣屋。品揃えは確かにいっぱいなんやけど、実はどれもひと目で雑な造りっちわかるような小物ばっかしっちゃね☠ やきー、名匠が創作したような傑作ばひとつもなし⛔ そん代わり、無名か刀剣造りの見習い新人が造ったようなシロモンばっかしが、少し大きめの棚に、ズラリと並んじょるだけっちゃね☹

 

「大きい声じゃ言えんちゃけど……安う仕入れて大量販売。その典型の店っちゃね、こりゃ☀」

 

 なんも考えちょらんかったとは言え、こげな店に足ば踏み入れた自分ば、おれは心底から後悔したもんばい☠ そやけど、転んでもタダで起きんとが、このおれの信条でもあるとやけ☆

 

「まっ、おれみてえな新人には、案外似合うとうかもしれんけ、こげなとこで手ば打ったほうがええかもね♥ 身銭かてそげんあるわけでもなかやしねぇ……☁」

 

  けっきょく、経済力に勝る実力なし⚠ おれは落ち込みかけた気分ば、開き直りに変換✄ 改めてこん店で、剣ば選ぶことにしたと☚☛ もしかして運が良かったら、けっこうな掘り出しモンに巡り会うかも……そげな根拠の乏しか期待に、ちょこっとだけ胸ばふくらませながらやね♡

 

  これってある意味、捕らぬタヌキの皮算用かもしれんちゃけど☺


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