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『剣遊記 邂逅編T』

第一章  出逢い……そして永遠に。

     (16)

 そんなフラフラした思いのままやった。深い森林の道ば、おれと彼女だけで歩きよった。やけど気がつけばだんだんと、辺りが薄暗うなってきよったと⚠

 

 昼過ぎに街ば出たとやけ当然なんやろうけど、そろそろ陽{ひ}が暮れてきようばいね☁

 

「ヤバかっ☞ 夜になるっちゃね☢」

 

 野獣とか怪物がウロチョロするかもしれん山ん奥で野宿なんち、まさにとんでもなか話ったいね☠ やけんここは急いで、宿屋のある人里ば行かんといけんばい☢ そげん考えてふだんの数倍、早足のスピードで先に進もうとしたときやった⛔

 

「うわっち?」

 

 おれの耳に微かなんやけど、カキィーンなんちいう、明らかに只事とは思えんような音が聞こえてきたっちゃね☜

 

「なんやろっか?」

 

「どげんかしたと?」

 

 おれが急に足ば停めたんで、変に思ったみたいやねぇ☻ 街ば出て以来初めてなんやけど、彼女が眉間にシワば寄せて、おれに尋ねてきよったと♋

 

「……な、なんね、おれんことば無視しよったんとちゃうんね☠」

 

 こげな事態になったかて、おれはまだ彼女に、嫌味な言葉ば投げつけちまったと☂ けれども彼女んほうが、こげなおれよかよっぽど、心が広いっちゅうモンやったばい⛑

 

「なん馬鹿んこつ言いよんね! 今ん音はわたしにもよう聞こえたとやけ、早よ行ってなんが起きちょうのか確かめるっちゅうのが戦士の務めやろ!」

 

「うわっち!」

 

 あからさまに態度ん悪かったおれに説教までして、逆に彼女が急き立ててくれたと☹ これやとまるで、たった今までしちょったケンカんこつなんか、綺麗さっぱり忘れちょうみたいっちゃねぇ☻ おまけにおれよか小柄な体格んくせして、その迫力はまさに満点モンやったと☀ これは完全に気迫負けしたこともあるんやけど、彼女の言い分のほうが、一理も二理も正しいこともあるようっちゃねぇ☺

 

「わ、わかったっちゃ……☃」

 

 おれはすぐに音がした方向に、全力で疾走ばしてやったと✈ こげなおれば見て、彼女も実に満足そうやったけねぇ⛷

 

「そうそう♡ それで良かっちゃけねぇ♡」

 

 おれはこのとき、彼女の人心操縦法を、改めて実感する思いになったっちゃね✍ ついでに言うたら、彼女の底力かて☞

 

「おまえ……けっこう足も速かっちゃねぇ♋」

 

 間抜けな自分を承知のうえ☺ 走りながらでおれは、真横に並んじょる彼女に言うてみたっちゃ☞ すると魔術師の彼女は、さも当然と言いたけな顔で応じてくれたっちゃね☻

 

「当ったり前やない☆ わたしは魔術師なんやけ♡」

 

 なんか言いよう意味が、いっちょもわからんかったっちゃね♋ それはともかく、昼過ぎから続いちょったケンカんことも、彼女の頭にはもはやっちゅうかやっぱり、カケラも残っちょらんみたいっちゃねぇ☺


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